BtoB企業のYouTube運用 — 撤退しないためのチャンネル設計

BtoB企業のYouTube運用 — 撤退しないためのチャンネル設計

企業のYouTube運用は6割超が撤退・中止を経験しているという調査があります。撤退理由ごとの対策を、目的、企画の型、制作体制、測り方の順に整理し、続けられるチャンネルの設計を解説します。

企業のYouTubeチャンネルは、始めることより続けることのほうが難しい取り組みです。YouTube運用代行のアカシアが実施した調査では、YouTubeを運用中または運用した経験がある企業の担当者のうち、62.7%が撤退・中止を経験していました。

撤退の理由として最も多かったのは「営業成果に繋がらなかった」です。再生数が伸びない、投稿が続かないといった理由も、ほぼ同じ割合で並んでいます。

この記事では、これからYouTubeチャンネルを始めたい方や、伸び悩んでいるチャンネルを立て直したいBtoB企業のマーケティング担当者に向けて、撤退理由ごとの対策を整理しました。目的の決め方、企画の型、制作体制、問い合わせへの導線、見直す指標までを順に見ていきます。動画マーケティング全体の進め方は、BtoBの動画マーケティングの進め方にまとめています。


この記事でわかること

  1. BtoB企業のYouTube運用の現状 — 運用している割合と撤退した割合
  2. 撤退が起きる理由 — 調査で上位に挙がった4つ
  3. 撤退理由ごとの対策 — 企画と制作体制でできること
  4. 目的から決めるチャンネルの型 — 営業支援、ナレッジ、採用
  5. 続けられる企画と撮影の組み方
  6. 問い合わせへの導線と、半年後に見直す指標

BtoB企業のYouTube運用の現状

運用している企業と、成果を感じている企業

SNS運用支援のビーヘルシーが2026年7月に実施した「BtoB企業の動画/SNS活用と問い合わせ・商談貢献に関する調査」(BtoB商材を扱う企業でマーケティングや営業などに関わる300名が対象)では、YouTubeまたは動画コンテンツを含む運用をしている企業は51.3%でした。

同じ調査で、動画またはSNSを運用している企業のうち72.7%が、問い合わせや商談などの成果につながっていると答えています。BtoB商材を検討するときに、企業のYouTubeやSNSの情報が「検討材料になる」と答えた人も64.0%いました。

一方で、6割超が撤退・中止を経験

アカシアが2026年2月に実施した「YouTube運用の撤退・失敗に関する実態調査」(YouTubeを運用中または運用経験がある企業の担当者303名が対象、BtoBに限らない)では、撤退・中止を経験した人が62.7%にのぼりました。

失敗と判断するまでの期間は「3〜6か月未満」が39.2%で最も多く、「3か月未満」と合わせると53.2%が半年以内に判断しています。1年未満まで含めると73.5%です。

成果を感じている企業がある一方で、成果が見える前に半年ほどで見切りをつける企業も多いことがわかります。YouTubeは本数と時間を重ねて評価が積み上がる媒体なので、始める前に「半年で何が見えていればよいか」を決めておくことが大切です。


撤退が起きる理由 — 調査で上位に挙がった4つ

アカシアの調査で、撤退・中止を経験した190名に理由を聞いた結果(複数回答)は次のとおりです。

撤退・中止の理由割合
営業成果に繋がらなかった41.1%
再生数が伸びず成果が見込めなかった39.5%
継続投稿が困難であった37.9%
費用対効果が見合わなかった33.2%
撤退・中止の理由 — 営業成果に繋がらなかった割合41.1%
撤退・中止の理由 — 再生数が伸びず成果が見込めなかった割合39.5%
撤退・中止の理由 — 継続投稿が困難であった割合37.9%
撤退・中止の理由 — 費用対効果が見合わなかった割合33.2%

上位2つは、事業の成果で判断した撤退と、再生数で判断した撤退がほぼ同じ割合で並んでいます。3つ目と4つ目は、作り続けるための手間と費用の問題です。

同じ調査では、失敗したときの改善策として「動画の品質向上に投資した」が35.5%で最も多く選ばれていました。ところが、経験した失敗や課題として動画の品質の低さを挙げた人は12.5%にとどまっています。撤退の理由の多くは、映像の品質より、目的と企画、体制の設計にあると読み取れるでしょう。

撤退・中止の理由の上位4つと、それぞれに対して企画と制作体制でできる対策の対応
撤退・中止の理由の上位4つと、それぞれに対して企画と制作体制でできる対策の対応

撤退理由ごとの対策

営業成果に繋がらない → 目的と導線を先に決める

最も多い理由です。原因として考えられるのは、チャンネルの目的が「認知」なのか「商談の支援」なのかが曖昧なまま始めていることと、動画を見た人が次に進む先が用意されていないことの2つです。

ビーヘルシーの調査で、動画やSNSが成果につながっていない、または測定できていないと答えた54名に最大の理由を聞くと、「問い合わせ・資料請求への導線が弱い」が20.4%で最多でした。「営業資料や商談で再利用できていない」も16.7%あります。回答者が少ないので参考値ですが、動画の中身より、動画の外側の設計で止まっている様子がうかがえます。

対策は、チャンネルの目的を1つに決め、動画ごとに「見た人に次に何をしてほしいか」を決めておくことです。営業が商談の前後に送れる動画を用意すると、YouTubeの外でも動画が働くようになります。営業で使う動画の作り方は、BtoBの営業動画の作り方で解説しています。

再生数が伸びない → BtoBの再生数の基準を持つ

BtoBの商材は、そもそも見込み客の数が限られます。消費者向けのチャンネルと同じ再生数を目標にすると、内容がよくても「伸びない」と判断してしまうでしょう。

対策の1つ目は、再生数の目標を見込み客の規模から考えることです。対象の業界と役職の人が、年に何人くらいいるかを考えれば、現実的な再生数が見えてきます。

2つ目は、見込み客が検索する言葉で企画を立てることです。製品名や社内の呼び方ではなく、顧客が困ったときに検索する課題の言葉をタイトルに入れます。営業やカスタマーサポートに寄せられる質問は、そのまま企画の候補になります。

投稿が続かない → 1回の撮影で複数本を作る

アカシアの調査では、経験した課題として「動画制作・編集に予想以上に手間がかかった」が20.8%、「定期的な更新を維持するのが困難だった」が18.2%でした。

毎週、企画から撮影までを1本ずつ進めると、担当者の本業が忙しくなった時点で止まります。そこで、撮影を月1回にまとめ、その日に複数本を撮る体制に切り替えます。たとえば同じ出演者に、テーマの違う解説を3〜4本続けて話してもらう方法です。長尺の動画からショート動画を切り出せば、投稿の本数も増やせます。ただし、切り出しただけのショートは再生されにくいため、冒頭の一言を含めた企画の考え方をBtoB企業のショート動画活用で詳しく扱いました。

費用対効果が見合わない → 1本を複数の場面で使う

1本あたりの費用を下げるより、1本を使う場面を増やすほうが、費用対効果は改善しやすいはずです。YouTubeに公開した動画を、自社サイトのサービスページ、商談前のメール、展示会、採用説明会でも使えるように企画しておきます。

採用の場面での使い方は、会社説明会を動画にする方法を参考にしてください。


目的から決めるチャンネルの型

BtoBのチャンネルは、目的によって作る動画と見る指標が変わります。代表的な3つの型を比べてみましょう。

チャンネルの型主な動画見る指標の例
営業支援製品の紹介、デモ、導入事例商談前の視聴、資料請求
ナレッジ業界の課題の解説、よくある質問への回答検索からの流入、指名検索
採用社員インタビュー、職場の紹介、会社説明会採用ページへのアクセス、応募
チャンネルの型 — 営業支援主な動画製品の紹介、デモ、導入事例見る指標の例商談前の視聴、資料請求
チャンネルの型 — ナレッジ主な動画業界の課題の解説、よくある質問への回答見る指標の例検索からの流入、指名検索
チャンネルの型 — 採用主な動画社員インタビュー、職場の紹介、会社説明会見る指標の例採用ページへのアクセス、応募

1つのチャンネルで3つを同時に狙うと、視聴者にとって何のチャンネルかがわかりにくくなります。最初の半年は1つの型に絞り、軌道に乗ってから広げるのがおすすめです。

BtoBの多くの企業にとって始めやすいのは、ナレッジの型でしょう。顧客の質問に答える動画は、検索から見つけてもらいやすく、商談の中でも共有できます。経営者が語る動画を軸にする場合は、経営者インタビュー動画で会社の信頼性を伝える方法も参考になります。


続けられる企画と撮影の組み方

チャンネルを続けるには、毎回ゼロから企画を考えない仕組みが必要です。制作の流れは、目的、企画の型、制作体制、測り方の4段階で設計します。

続けられるチャンネル設計の4段階。目的、企画の型、制作体制、測り方の順に決める流れ
続けられるチャンネル設計の4段階。目的、企画の型、制作体制、測り方の順に決める流れ

企画はシリーズで決める

1本ずつ企画を考えるのではなく、シリーズ(連載)の形で決めておきます。

  • 質問に答えるシリーズ — 顧客からよく聞かれる質問に1本1問で答える
  • 用語解説シリーズ — 業界の用語や判断の基準を1本1つずつ説明する
  • 事例シリーズ — 導入した企業の担当者に経緯を聞く
  • 社員シリーズ — 社員が仕事の進め方や考えていることを話す

シリーズの型が決まっていれば、毎回考えるのは中身だけです。最初に10本分のテーマを書き出せるシリーズを選んでおくと、ネタ切れで止まることが少なくなります。

導入事例の動画は営業支援の型で特に効きやすい一方、撮影には顧客の協力が必要です。進め方は導入事例動画の作り方を5ステップで解説にまとめています。

撮影は月1回にまとめる

撮影の準備は、1本でも4本でも大きくは変わりません。出演者の予定を押さえる、場所を用意する、機材を組む、といった手間は撮影1回ごとにかかります。月に1回、半日の撮影日を決め、その日に4本前後をまとめて撮れば、週1本の公開に必要な分がそろう計算です。

制作体制は、全部を社内で進める、撮影と編集だけを外部に任せる、企画から運用まで外部に任せる、の3通りが考えられます。アカシアの調査では、運用体制は「すべて自社運用」が57.1%で、完全外注と一部外注を合わせると42.9%でした。

どれを選ぶ場合も、企画のテーマを決める役割は社内に残しておくのが望ましいでしょう。顧客の質問や業界の課題を知っているのは、社内の担当者だからです。



動画から問い合わせ・資料DLへの導線

動画を見て興味を持った人が、次に進める道を用意しておきます。YouTubeの中でできることと、YouTubeの外でできることに分けて考えましょう。

YouTubeの中でできること

  • 概要欄 — 冒頭の数行に、関連する資料やサービスページのURLを書く
  • 動画の中 — 最後に、次に見てほしい動画や資料を口頭とテロップで案内する
  • 終了画面 — 関連する動画やチャンネル登録を案内する

YouTubeヘルプによると、終了画面は動画の最後の5〜20秒に追加でき、表示するには動画の長さが25秒以上必要です。終了画面から外部のWebサイトへのリンクを作れるのは、YouTubeパートナープログラムに参加しているクリエイターに限られます。BtoBのチャンネルでは、Webサイトへの案内は概要欄と動画の中で行うのが現実的でしょう。

YouTubeの外でできること

  • 自社サイトのサービスページや事例ページに動画を埋め込む
  • 資料をダウンロードした人へのメールで、関連する動画を案内する
  • 商談の前後に、営業が動画のURLを送る

YouTubeに公開した動画は、自社サイトやメールでも使えます。YouTubeの中だけで成果を出そうとしないことが、営業成果を理由にした撤退を防ぐ一番の近道です。


半年後に見直す指標

アカシアの調査では、半数以上が半年以内に失敗と判断していました。だからこそ、始める前に半年後に何を見て判断するかを決めておきます。

3段階で見る

  • 届いているか — 再生数、視聴維持率、検索からの流入
  • 次に進んでいるか — 概要欄のリンクのクリック、自社サイトへのアクセス、チャンネル登録
  • 事業につながっているか — 資料請求や問い合わせで「動画を見た」と答えた人の数、商談での動画の利用回数

半年の時点では、3段目の指標はまだ小さいことが多いはずです。1段目と2段目が少しずつでも伸びていれば、続ける判断の材料になります。

アカシアの調査で、失敗を経験しながらも運用を続けた113名に理由を聞くと、「ブランド認知度が向上した」が23.9%、「営業成果につながるリードが発生した」が21.2%、「顧客との接触機会が増えた」が18.6%でした。続けた企業は、再生数以外の手応えを確かめていたと考えられます。

見直すときの順番

指標が動かないときは、映像の品質より先に、次の順で見直します。

  1. 目的は1つに絞れているか
  2. 企画は見込み客が検索する課題に合っているか
  3. 撮影と編集の体制は、無理なく続けられる量になっているか
  4. 動画の外への導線は用意されているか

動画の指標と、商談や受注の数字をつなぐ方法は、動画マーケティングの効果測定で詳しく扱っています。


よくある質問

Q1. 投稿の頻度はどれくらいがよいですか?

無理なく続けられる頻度が基準になります。最初から週に何本もと決めるより、月1回の撮影で用意できる本数から逆算し、週1本や隔週1本で始める方法がおすすめです。途中で止まるより、少ない本数でも続けるほうが、チャンネルの評価は積み上がります。

Q2. 再生数が少ない動画は削除したほうがよいですか?

削除する前に、その動画が商談や自社サイトで使われていないかを確かめましょう。BtoBの動画は、再生数が少なくても、営業が送るたびに役立っている場合があります。内容が古くなった動画は、削除より限定公開に切り替える方法もあります。

Q3. 運用を外注するとき、何を社内に残すべきですか?

チャンネルの目的と、企画のテーマを決める役割です。撮影や編集、投稿作業は外部に任せられますが、顧客の質問や業界の課題を一番よく知っているのは社内の担当者です。月に1回、外注先と企画のテーマを決める時間を取っておくと進めやすくなります。


まとめ

主要ポイント

  1. 6割超が撤退・中止を経験 — 半数以上が半年以内に失敗と判断している
  2. 撤退理由の上位は4つ — 営業成果、再生数、投稿の継続、費用対効果
  3. 原因は品質より設計 — 目的、企画、体制、導線を先に整える
  4. チャンネルの型は1つに絞る — 営業支援、ナレッジ、採用から選ぶ
  5. 企画はシリーズで、撮影は月1回にまとめる — 毎回ゼロから考えない
  6. 半年後の判断基準を先に決める — 届いているか、次に進んでいるか、事業につながっているか

次のステップ

  • チャンネルの目的を1つ選び、半年後に見る指標を書き出す
  • 顧客からよく聞かれる質問を10個集め、最初のシリーズの候補にする
  • 月1回の撮影日と、その日に撮る本数を決める

YouTubeを含むSNSの動画運用の設計については、デジタルメディア戦略事業でもご相談を承っています。


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参考ソース

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