会社説明会を動画にすると、同じ説明を何度も繰り返す工数は確かに減ります。ただ、録画に置き換えるだけでは、説明会でしか伝えられなかったことまで一緒に失われてしまうかもしれません。
大切なのは、録画で十分に伝わる内容と、その場で話さないと伝わらない内容を分けることです。事業や制度の説明は録画に任せ、質疑や社員との対話はライブに残す。この分け方ができると、説明会の回数を減らしながら、参加者ひとりあたりの対話の時間を増やせます。
この記事では、新卒・中途の採用担当の方に向けて、会社説明会を動画にするときの役割分担、章立てと尺、収録の準備、録画を切り出して採用サイトやSNSに展開する流れを整理します。採用動画そのものの作り方は、新卒向け・中途向けの記事で扱っているため、ここでは説明会の運営と動画化に絞りました。
この記事でわかること
- 学生と企業の説明会への関わり方の変化 — 調査データから
- ライブと録画の役割分担 — 何を残し、何を任せるか
- 録画に任せる説明の章立てと尺
- ライブに残す時間の組み立て方
- 説明会を録画して切り出す流れ — 本編、章ごとの短い動画、採用サイト・SNS
- 収録の準備と、新卒・中途で変える点
説明会への関わり方の変化 — 調査データから
マイナビの「2026年度(2027年卒版)新卒採用・就職戦線総括」に収録されたデータ(マイナビ2027年卒大学生キャリア意向調査、2026年3〜6月)では、6月までに学生が参加した個別企業セミナーの社数は、対面が平均5.1社でした。25年卒の6.8社、26年卒の5.7社から続けて減っています。WEB(ライブ形式)は13.3社で、26年卒の16.0社からは減ったものの、対面の2倍以上の水準です。
企業側の動きも見てみましょう。同じ総括に収録された「マイナビ2027年卒企業新卒採用活動調査」(2026年6月)では、企業認知のために実施したことの最多が「WEBセミナー(ライブ形式)」で、52.3%の企業が実施していました。
学生は参加する企業を絞り、オンラインで効率よく情報を集める一方で、対面の機会は選んで使っている様子がうかがえます。説明会を動画にするかどうかより、どの情報を、どの形式で届けるかを設計し直す時期に来ているといえるでしょう。
ライブと録画の役割分担
役割分担の手がかりになるのが、学生が「自分では調べきれない」と感じている情報です。
同じ総括に収録されたマイナビ キャリアリサーチLabのレポートでは、2027年卒の学生1,161名に「生成AIでは調べきれないと思う業種・職種・企業の情報」を聞いています。上位は「社員の人柄」56.8%、「自分に合っているか」55.8%、「社風」43.2%、「選考で重視されるポイント」38.5%でした。一方で「給与・待遇」は13.0%、「福利厚生や制度の内容」は10.2%、「事業内容」は7.7%にとどまっています。
つまり、事業内容や制度の説明は、学生が自分でも調べられると考えている情報だといえます。社員の人柄や社風、自分に合うかどうかは、人と直接やりとりしないとわからないと受け止められているようです。

この結果をもとに、説明会の内容を次のように分けると判断しやすくなります。
| 内容 | 向いている形式 | 理由 |
|---|---|---|
| 事業内容、会社の歴史 | 録画 | 毎回同じで、学生が自分でも調べられる |
| 仕事内容、職種の説明 | 録画 | 職種ごとに章を分けると選んで見られる |
| 制度、待遇、選考の流れ | 録画 | 正確さが大事で、更新もしやすい |
| 質疑応答 | ライブ | 参加者ごとに知りたいことが違う |
| 社員との対話、座談会 | ライブ | 人柄や雰囲気はやりとりの中で伝わる |
| 選考で見ているポイント | ライブ | 質問を受けながら補足できる |
録画に任せた分だけ、ライブの時間を対話に回せます。説明会の時間を短くするのではなく、説明の時間を減らして、対話の時間を増やすという考え方で組み立てると、学生の満足度も保ちやすいはずです。
録画に任せる説明の章立てと尺
録画する説明は、1本の長い動画にするより、章に分けておくと使い道が広がります。目安の章立てと尺は次のとおりです。
- 会社と事業の紹介(5〜8分)
- 仕事内容と職種ごとの説明(職種ごとに3〜5分)
- 1日の流れや働く環境(3〜5分)
- 制度と待遇(3〜5分)
- 選考の流れと、応募の方法(2〜3分)
全体で20〜30分程度になりますが、章ごとに見られるようにしておけば、学生は関心のある職種や制度だけを選べます。録画にした説明会でも、最初の1分で「この動画で何がわかるか」と「章の一覧」を示しておくと、途中で離脱されにくくなるでしょう。
章を分けるときは、年度ごとに変わる部分を独立させておくのがポイントです。選考の日程や募集職種、初任給などは毎年変わります。こうした情報を1つの章にまとめておけば、翌年度はその章だけを撮り直せば済みます。
話し手は、章によって変えてかまいません。事業の紹介は役員や事業部長、仕事内容はその職種の社員、制度と選考の流れは人事担当者というように、内容にいちばん近い人が話すと説得力が増します。社員に出てもらうときの人選は、社員インタビュー動画の出演者選びが参考になります。
ライブに残す時間の組み立て方
録画で事前に説明を済ませておくと、ライブの説明会は「録画を見てきた人」を前提に組み立てられます。
事前に録画を見てもらう
申し込みの確認メールに録画のリンクを添え、「当日は質疑と社員との対話を中心に進めます」と伝えておきます。当日の冒頭5分で要点だけをおさらいすれば、見てこなかった人も話についていけます。
質疑の時間を長めに取る
録画では答えられない、参加者ごとの疑問に答える時間です。事前に申込フォームで質問を集めておくと、当日に質問が出にくい場合でも進めやすくなります。
社員との対話を少人数で行う
オンラインならブレイクアウトルーム、対面なら座談会の形で、1人の社員に数名の参加者がつく形にします。人数が多いと質問しにくくなるため、少人数のほうが人柄や雰囲気が伝わりやすいでしょう。
選考で見ているポイントを話す
調査で上位に挙がった「選考で重視されるポイント」は、録画にすると言葉が一人歩きしやすい内容です。ライブで、質問を受けながら補足するほうが誤解を生みにくくなります。
説明会を録画して切り出す流れ
ライブの説明会も、録画しておけば素材になります。1回の説明会から、次のような形で展開できます。

本編 — オンデマンド配信用
説明パートを章ごとに整え、オンデマンドで見られる本編にします。ライブの説明会に参加できなかった人や、日程が合わなかった人の受け皿になります。
オンデマンド配信では、誰でも見られる形にするか、申し込んだ人だけが見られる形にするかは、先に決めておきたいところです。申し込み制にすると、視聴した人に後からライブの説明会や面談を案内できます。一方で、申し込みの手間がある分、気軽に見てもらいにくくなる面もあります。事業や仕事内容の章は公開し、制度や選考の詳細は申し込み後に見られるようにするなど、章ごとに公開範囲を分ける方法も考えられるでしょう。
章ごとの短い動画 — 採用サイトとエントリー後のメール用
職種の説明や1日の流れなど、章を1本ずつ切り出して、採用サイトの該当ページに置きます。採用サイトに動画を置くときの配置は採用動画と採用LPの相乗効果で詳しく扱っています。
縦型の短い動画 — SNS用
社員の印象的なひとことや、職場の様子などを30〜60秒に切り出します。横長の画面から縦型に切り出す場合は、撮影の時点で人物を画面の中央に置いておくと扱いやすくなります。縦横比の考え方は動画の縦横比の選び方を、再生されるショート動画の企画と冒頭の作り方はBtoB企業のショート動画活用を参考にしてください。
なお、質疑や座談会の部分は、参加者が映り込んだり、本人が特定できる質問が含まれたりするため、そのまま公開には使いません。使う場合は社員の回答部分だけを切り出し、質問は文字で置き換えるなどの配慮が必要です。
収録の準備で決めておくこと
録画して使い回す前提なら、収録の前に次の点を決めておくと、編集の手間が大きく変わります。
- 音声を別に録る — 話し手ごとにピンマイクをつけると、会場の雑音が入りにくい
- スライドと話し手を分けて録る — スライドの画面と、話し手を映すカメラを別々に録っておくと、章ごとに編集しやすい
- 章の区切りで間を取る — 章が変わるところで一呼吸おくと、切り出しやすくなる
- 年度や日付を口にしない — 「今年は」「来月の」といった言い方を避けると、翌年度も使える章が増える
- 出演者の許諾を取る — 説明会の録画を、どこに、いつまで公開するかを社員に伝えて同意を得ておく
社員の出演については、退職後の扱いも含めて決めておくと安心です。社員が出演する動画の肖像権と著作権で、契約で決めておくことをまとめています。
新卒と中途で変える点
説明会の役割分担の考え方は新卒も中途も同じですが、録画とライブの比重は変わります。
新卒 — 録画で知ってもらい、ライブで比べてもらう
新卒の学生は、複数の企業を比べながら応募先を絞っていきます。録画で事業や仕事内容を先に知ってもらい、ライブでは社員との対話や選考の考え方に時間を使う形が合うでしょう。新卒向けの採用動画の構成は新卒採用向け動画の作り方で詳しく解説しています。
中途 — 録画を中心にし、個別の面談につなぐ
働きながら転職を考えている人は、決まった日時の説明会に参加しにくいものです。中途向けは録画を中心にして、関心を持った人には個別の面談やカジュアルな面談を案内する形が現実的でしょう。中途向けの伝え方は中途採用向け動画の作り方を参考にしてください。
説明会のあと、選考や内定の段階で使う動画については内定承諾率を上げる動画の使い方にまとめています。
公開後に見る数字と、見直しの進め方
録画とライブを分けたあとは、数字を見ながら章立てや当日の進め方を見直していきます。見ておきたいのは次の4つです。
- 章ごとの視聴の維持率 — 途中で見られなくなる章があれば、尺が長すぎるか、内容が伝わりにくい可能性がある
- ライブ参加者のうち、録画を見てきた人の割合 — 当日の冒頭アンケートで聞くと把握できる
- 説明会のあとのエントリー率 — 録画を導入する前の説明会と比べる
- 当日の質疑で多かった質問 — 何度も出る質問は、録画の章に加える候補になる
特に最後の点は、録画とライブの分担を毎年少しずつ調整するための材料になります。ライブで繰り返し同じ質問が出るなら、それは録画で先に答えておける内容です。反対に、録画の章で視聴が落ちる部分は、ライブで話したほうが伝わるのかもしれません。
録画の視聴データは、採用サイトに置いた動画ならアクセス解析で、動画配信サービスに置いた動画ならその分析機能で確認できます。採用サイトでの計測の考え方は、先ほど紹介した採用LPの記事で扱っています。
よくある質問
Q1. 説明会をすべて録画にしてもよいですか?
工数は減りますが、質疑や社員との対話まで録画に置き換えると、人柄や社風が伝わりにくくなります。事業や制度の説明は録画に任せ、対話の時間はライブで残す形をおすすめします。
Q2. 録画した説明会は、どこに置けばよいですか?
採用サイトやエントリー後のマイページなど、応募を考えている人がたどり着く場所に置くのが基本です。誰でも見られる場所に置くか、エントリーした人だけに見せるかは、内容に合わせて決めます。制度や選考の詳細は、エントリー後に限定する企業もあります。
Q3. 毎年撮り直す必要はありますか?
章を分けておけば、すべてを撮り直す必要はありません。選考日程や募集職種のように年度で変わる章だけを更新し、事業や仕事内容の章は内容が変わったときに見直す形で十分です。
まとめ
主要ポイント
- 録画と対面・ライブを分けて使う時代になっている — 学生は対面の個別企業セミナーを絞り、オンラインで情報を集めている
- 録画に任せるのは事業・仕事内容・制度の説明 — 学生が自分でも調べられると考えている情報
- ライブに残すのは質疑と社員との対話 — 人柄や社風は、やりとりの中で伝わる
- 録画は章に分け、年度で変わる部分を独立させる — 更新は1章だけで済む
- 1回の説明会から複数の動画を作る — 本編、章ごとの短い動画、SNS向けの縦型動画
次のステップ
- 今の説明会の内容を書き出し、録画に任せるものとライブに残すものに分ける
- 録画に任せる説明の章立てと、話し手を決める
- 次回の説明会を、切り出しを前提にした準備で収録する
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参考ソース
- 2026年度(2027年卒版)新卒採用・就職戦線総括(マイナビ キャリアリサーチLab、2026年10月2日) — 個別企業セミナーの参加社数(対面とWEBライブ形式)、企業認知のために実施したこと、生成AIでは調べきれないと思う情報
- 2026年度(2027年卒版)新卒採用・就職戦線総括 PDF(マイナビ) — 学生の活動量の推移(25ページ)、企業認知のために実施したこと(21ページ)、レポート「AI就活時代だからこそリアルで知りたいというホンネ」(54〜57ページ)