営業動画は、営業担当者の説明をそのまま録画したものではありません。営業が同席できない場面で、相手の社内に説明を持ち帰ってもらうための資料として作ると、使われ方が変わります。
BtoBの商談では、目の前の担当者がひとりで決めることはあまりありません。担当者は商談のあと、上長や関係部署、決裁者に内容を説明し直します。その説明を助けるのが営業動画の役割です。
この記事では、営業動画を作りたい営業企画・マーケティング担当の方に向けて、制作側の視点から作り方をまとめました。誰が出るか、何分で切るか、製品が変わっても使い続けられる章の分け方、相手の社内で転送されやすい形まで順に見ていきます。動画マーケティング全体の進め方はBtoBの動画マーケティングの進め方で整理しています。
この記事でわかること
- 営業動画が必要になる背景 — 営業に会う前と、会ったあと
- 営業動画に向く説明、向かない説明
- 商談前・商談中・商談後に送る動画の役割
- 出演者と尺の決め方 — 営業本人、代表、既存顧客
- 製品の改訂に耐える章分け — 差し替える部分と固定する部分
- 相手の社内で転送されやすい作り方と、見られたかの確認方法
営業動画が必要になる背景 — 営業に会う前と、会ったあと
ワンマーケティングの「BtoB購買プロセス白書2025」(経営者・役員、購買・契約担当者600名が対象、2025年9月30日〜10月1日に実施)では、営業担当者との初回面談の時点で「ほぼ決まっている」が29%、「いくつかの候補に絞り込まれている」が56%でした。合わせて85%が、面談の前に購買先の候補を絞り込んでいることになります。
同じ調査では、購買に関わる人数の平均が、取引金額300万円未満で5.6人、中価格帯で14.4人、高価格帯で18.3人と報告されています。営業が直接話せるのは、そのうちの数人にとどまるでしょう。
つまり営業動画が働く場面は2つあります。ひとつは、面談の前に候補に残るための説明です。もうひとつは、面談のあとに、営業が会えない関係者へ説明を届けることだといえます。
動画制作会社の株式会社Lumiiが2025年1月に実施した調査(BtoB企業で動画を活用している営業・マーケティング担当者402名が対象)では、最も動画の効果を実感した場面として「商談」が34.3%で最多でした。今後作りたい動画では「営業プレゼン用の動画」が32.3%で、「商品・サービスの紹介動画」の45.5%に次ぐ2番目です。
営業動画に向く説明、向かない説明
営業の説明をすべて動画にする必要はありません。最初に、動画に置き換える範囲を決めておくと、尺も台本も決めやすくなります。
| 説明の内容 | 動画との相性 | 理由 |
|---|---|---|
| 会社と担当チームの紹介 | 向いている | 毎回同じ内容で、人柄や雰囲気が伝わる |
| 課題の整理と解決の考え方 | 向いている | 図を使うと短く伝えられる |
| 製品の操作や画面の動き | 向いている | 文字で説明すると長くなる |
| 導入までの流れ | 向いている | 社内説明でよく聞かれる |
| 価格や見積もり | 向かない | 相手ごとに変わり、更新も多い |
| 個別の要件への回答 | 向かない | 商談の場か書面で答えるほうが確実 |
目安は「どの相手にも同じ説明をしているか」です。毎回同じ話を繰り返している部分は動画に向いており、相手ごとに変わる部分は商談や提案書に残します。価格のように頻繁に変わる情報を動画に入れると、改訂のたびに作り直しになるため、避けたほうが無難でしょう。
商談前・商談中・商談後に送る動画の役割
営業動画は、商談のどの時点で送るかによって中身が変わります。

商談前 — 初回面談の準備に使ってもらう
- 内容 — 会社と担当者の紹介、扱っている課題、面談で話すこと
- 尺の目安 — 1〜3分
- 出演 — 担当する営業本人
面談の日程が決まったあとの確認メールに添えるのが一般的です。目的は、面談の冒頭でしている会社紹介を先に済ませてもらうこと。相手が事前に見ておけば、面談の時間を課題のヒアリングに使えます。
商談中 — 提案の補足として使う
- 内容 — 製品のデモ、導入までの流れ、導入事例
- 尺の目安 — 章ごとに1〜3分、全体で5〜10分
- 出演 — 製品の担当者、既存顧客
面談で見せるだけでなく、面談後に「先ほどお見せした内容です」と送れる形にしておくと、相手が社内で説明するときにそのまま使えます。
商談後 — 稟議と社内説明を助ける
- 内容 — 提案の要点のまとめ、経営者のメッセージ、導入後の支援体制
- 尺の目安 — 3〜5分
- 出演 — 営業本人、代表、導入後の支援担当者
この段階で見るのは、まだ営業と会っていない上長や決裁者です。前提の説明を省かず、この動画だけで提案の要点がわかる構成にしておきましょう。
出演者の選び方 — 営業本人、代表、既存顧客
営業動画では、誰が話すかで伝わる内容が変わります。出演者ごとの向き不向きを整理しました。
営業本人 — 商談前の動画に向く
面談の前に担当者の顔と話し方がわかると、相手は安心して面談に臨めます。ただし、担当者ごとに撮る必要があり、異動や退職のたびに撮り直しが発生するのが難点です。営業本人が出る部分は1〜2分の短い挨拶に限り、会社や製品の説明は別の章に分けておくのがおすすめです。
代表・役員 — 決裁者に向けた動画に向く
決裁者が気にするのは、会社としての方針や、長く付き合える相手かどうかです。代表が自分の言葉で事業の考え方を話す動画は、商談後の段階で効きやすいでしょう。代表が出る動画の作り方は経営者インタビュー動画で会社の信頼性を伝える方法で詳しく扱っています。
既存顧客 — 比較の決め手になる
同じ立場の担当者が語る導入の経緯は、売り手の説明よりも信頼されやすい情報です。一方で、顧客の出演には許諾や公開範囲の調整が欠かせません。顧客が語る動画の作り方は、導入事例動画の作り方を5ステップで解説を参考にしてください。
社員が出演する場合は、退職後の扱いも先に決めておくと安心です。契約で決めておくことは社員が出演する動画の肖像権と著作権にまとめています。
何分で切るか — 尺の決め方
尺は「見る人が、どの場面で、どのくらい時間を割けるか」から決めます。
- メールで送る1本目 — 1〜3分。開いてすぐ最後まで見られる長さ
- 提案の補足 — 1章あたり1〜3分。全体が長くなっても、章ごとに見られるようにする
- 稟議用のまとめ — 3〜5分。会議の冒頭で流せる長さ
気をつけたいのは、1本に全部を詰め込まないことです。10分の動画を1本作るより、3分の動画を3本作るほうが、相手は必要な章だけを選んで見られます。この分け方は、後で説明する改訂のしやすさにもつながります。
構成と台本の作り方
営業動画の構成は、次の順番を基本にすると組み立てやすくなります。
- 誰が、何のために話す動画か(10秒程度)
- 相手が抱えている課題の整理
- 解決の考え方と、製品・サービスの位置づけ
- 根拠(導入事例、数字、実際の画面)
- 次にしてほしいこと(面談の予約、資料の確認、社内での共有)
台本は、出演者によって書き込む量を変えます。営業本人や代表が話す部分は、要点だけを箇条書きにした台本にして、言い回しは本人に任せたほうが自然に話せるはずです。製品の説明や画面の操作は正確さが求められるため、ナレーションの原稿まで書き起こしておくと確認がしやすくなります。
確認の段階では、営業部門、製品の担当者、法務や広報など、見る人が増えがちです。絵コンテの段階で関係者の合意を取っておくと、撮影後の修正が減ります。進め方は動画の修正回数を減らす絵コンテの作り方を参考にしてください。
製品が変わっても使い続けられる章分け
営業動画が使われなくなる理由で多いのは、製品の画面や料金が変わり、動画の内容が古くなることです。作るときに、変わりやすい部分と変わりにくい部分を分けておけば、改訂のたびに全部を作り直さずに済みます。

固定する部分 — 年に1回見直す程度
- 会社と事業の考え方
- 扱っている課題と、解決の考え方
- 代表のメッセージ
これらは製品のバージョンが変わっても大きくは変わりません。撮影にしっかり時間をかけてよい部分です。
差し替える部分 — 製品の改訂に合わせて更新する
- 製品の画面と操作のデモ
- 機能の一覧、対応している範囲
- 導入事例(新しい事例が増えたら入れ替える)
- 営業担当者の挨拶
差し替える部分は、画面の録画やスライドとナレーションで作ると、更新の負担が小さくなります。人物の撮影をやり直さなくても、画面を録り直して差し替えられるからです。
章ごとに独立させる
章の中で「先ほどの画面で」のように前後の章を参照すると、1章を差し替えたときに話がつながらなくなります。各章をそれだけで意味がわかるように作ることが、改訂に強い営業動画の条件です。BGMやテロップの書式も章ごとにそろえておけば、差し替えた章だけ雰囲気が違う、ということも防げます。
制作会社に依頼する場合は、編集データと撮影素材の扱いを契約時に確認しておきましょう。差し替えのたびに一から編集し直すことになると、費用がかさみます。見積もりの内訳は動画制作の見積もりの読み方で解説しています。
担当者が社内で転送しやすい作り方
営業動画の多くは、最初に受け取った担当者から、上長や関係部署に転送されて見られます。転送された先で見る人は、商談の経緯を知りません。転送されやすくするために、制作の段階で次の点を決めておきます。
- 冒頭で文脈を伝える — 「〇〇のご検討に向けた、△△のご説明です」のように、誰に向けた何の動画かを最初の10秒で示す
- 音なしでも追えるようにする — 社内で音を出せない環境でも見られるよう、要点はテロップで出す
- リンクひとつで開ける — ログインや専用アプリが必要な置き場所は避ける。相手の会社で外部サイトの閲覧が制限されていないかも確かめる
- 相手の社名を入れすぎない — 個別の動画は喜ばれるものの、他社に使えず手間も増える。個別にするのは冒頭の挨拶だけにとどめる
- 1枚の資料を添える — 動画の要点と各章の時間を書いた資料をつけると、開く前に内容がわかる
特に冒頭の10秒は、転送先の決裁者が見続けるかどうかを左右する部分です。担当者が説明を添えなくても内容が伝わるように作っておくと、相手の社内で説明が広がりやすくなります。提案書の中に動画のリンクを入れる場合も、リンクの横に「何の動画か」と「何分か」を書いておくと開いてもらいやすいでしょう。
送り方と、見られたかの確認方法
送り方は、商談の段階ごとに決めておくと、営業担当者によるばらつきが減ります。
- 商談前 — 日程確定のメールに、動画のリンクと「面談の前に3分ほどご覧ください」という一文を添える
- 商談中 — 面談の最後に画面で見せ、面談後のお礼メールで同じ動画を送る
- 商談後 — 提案書の中にリンクを入れ、稟議用のまとめとして送る
見られたかどうかを確認できる範囲は、動画の置き場所によって異なるのが実情です。動画配信サービスの分析機能を使えば、再生された回数やどこまで見られたかがわかります。営業向けの動画配信ツールの中には、誰がいつ見たかまで記録できるものもあります。
ただし、視聴の記録だけを見ていても、動画が商談に役立ったかはわかりません。商談の記録に「動画を送ったか」「相手が見たか」を残し、受注までの期間や受注率を比べられるようにしておくことが大切です。指標の決め方は動画マーケティングの効果測定で詳しく整理しています。
よくある質問
Q1. 営業動画は営業担当者ごとに作るべきですか?
すべてを担当者ごとに作る必要はありません。担当者の挨拶だけを1〜2分の短い章にして、会社や製品の説明は共通の章にすると、担当者が異動しても挨拶の章を撮り直すだけで済みます。
Q2. 営業動画はスマートフォンで撮ってもよいですか?
商談前に送る担当者の挨拶のように、人柄が伝われば十分な動画なら、スマートフォンでも問題ありません。会社や製品の説明のように長く使う章は、音声と照明を整えて撮っておくと、何度送っても見劣りしにくくなります。
Q3. 営業動画と導入事例動画は、どちらを先に作るべきですか?
営業が毎回同じ説明に時間を取られているなら、営業動画が先です。比較の段階で競合に負けることが多いなら、導入事例動画から始めると効果を確かめやすいでしょう。
まとめ
主要ポイント
- 営業動画は、営業が会えない人に説明を届ける資料 — 購買担当者の85%が面談前に候補を絞り込み、関わる人は数人から十数人に及ぶ
- 商談の段階ごとに役割が変わる — 商談前は紹介、商談中は補足、商談後は稟議の材料
- 出演者は目的で選ぶ — 営業本人、代表、既存顧客
- 章に分け、変わりやすい部分を差し替えられるようにする — 価格は動画に入れない
- 転送先で見る人を想定する — 冒頭10秒、テロップ、リンクひとつで開ける置き場所
次のステップ
- 営業が毎回同じ説明をしている部分を書き出し、動画に置き換える範囲を決める
- 商談前・商談中・商談後のうち、最初に作る1本を決める
- 固定する章と差し替える章を分けた構成案を作る
関連記事
参考ソース
- BtoB購買プロセス白書2025(ワンマーケティング、2025年11月11日) — 初回面談前の購買先候補の絞り込み、取引金額別の関与人数
- BtoB企業の営業・マーケティングにおける動画活用の実態調査(株式会社Lumii、2025年2月4日) — 調査概要と効果の実感
- BtoB企業の営業・マーケティングにおける動画活用の実態調査 詳細(株式会社Lumii) — 最も動画の効果を実感した場面、今後制作したい動画