企業動画の台本の書き方 — 耳で聞いて分かる原稿の作り方

企業動画の台本の書き方 — 耳で聞いて分かる原稿の作り方

企業動画の台本を、誰が何を書くかの分担、そのまま使えるひな形、耳で聞いて分かる文の作り方、社内確認の順番と変更の締め切りの順に整理しました。初めて台本に関わる方向けの内容です。

動画の台本は、読むための文章ではなく、耳で聞いて一度で分かるための原稿です。資料やWebページの文章をそのまま読み上げると、内容は正しくても、聞いている人には伝わりにくくなります。

初めて動画を発注する担当者や、社内で動画を作り始めた担当者からは「台本はどこまで自分たちで書けばよいのか」「社内で確認するたびに中身が変わってしまう」という声がよく聞かれます。台本の書き方そのものより、誰が何を書き、いつまでに固めるかが決まっていないことが原因になっている場合も多いものです。

この記事では、企業動画の台本について、発注者と制作会社の分担、台本のひな形、耳で聞いて分かる文の作り方、社内確認で崩れない進め方の順に整理します。


この記事でわかること

  1. 台本の役割 — 構成案や絵コンテとの違い
  2. 発注者と制作会社の分担 — それぞれが書く部分
  3. 台本のひな形 — 1本の台本に入れる項目
  4. 耳で聞いて分かる文の作り方 — 一文の長さ、言い換え、数字の読み方
  5. 社内確認で崩れない進め方 — 確認の順番と変更の締め切り

動画の台本とは — 構成案、絵コンテとの違い

企業動画の制作では、言葉と画を決める資料がいくつか出てきます。名前が似ているので、役割を先に整理しておきましょう。

  • 構成案 — 動画全体の流れを、章立てと各章の秒数で示したもの。何をどの順番で伝えるかを決める段階です
  • 台本 — ナレーション、出演者のセリフ、テロップなど、動画の中で使う言葉を決めたもの
  • 絵コンテ — 各カットの画面の見え方を、絵や写真で示したもの

台本は、構成案で決めた流れに言葉を入れる工程にあたります。画面の見え方を決める絵コンテとは対になる資料で、両方がそろうと完成形を想像しやすくなるはずです。絵コンテの作り方は動画の修正回数を減らす絵コンテの作り方で解説しているので、この記事では言葉の部分に絞ります。

インタビュー動画のように出演者が自分の言葉で話す動画でも、ナレーション、テロップ、質問の順番を決める台本は必要です。台本がない動画は少なく、違いは書き込む量にあります。


台本は誰が書くか — 発注者と制作会社の分担

外注する場合、台本は制作会社が書くものだと思われがちです。ただ、制作会社だけでは書けない部分があります。分担をまとめると、次のようになります。

書く部分主に書く人中身
伝えたいこと発注者見た人に一番伝えたいことを1つ
事実発注者製品名、数字、正式名称、実績
NG表現発注者言ってはいけないこと、社内規定
構成制作会社流れ、章立て、秒数の配分
言い回し制作会社耳で聞いて分かる言葉への書き換え
尺合わせ制作会社読む時間と映像の長さの調整
書く部分 — 伝えたいこと主に書く人発注者中身見た人に一番伝えたいことを1つ
書く部分 — 事実主に書く人発注者中身製品名、数字、正式名称、実績
書く部分 — NG表現主に書く人発注者中身言ってはいけないこと、社内規定
書く部分 — 構成主に書く人制作会社中身流れ、章立て、秒数の配分
書く部分 — 言い回し主に書く人制作会社中身耳で聞いて分かる言葉への書き換え
書く部分 — 尺合わせ主に書く人制作会社中身読む時間と映像の長さの調整
発注者が書く伝えたいこと・事実・NG表現と、制作会社が書く構成・言い回し・尺合わせの分担を示した図
発注者が書く伝えたいこと・事実・NG表現と、制作会社が書く構成・言い回し・尺合わせの分担を示した図

発注者が書く3つのこと

発注者が用意するのは、きれいな文章ではなく材料です。

  • 伝えたいこと — 「見終わった人に、何を覚えていてほしいか」を1文で書きます。複数あるときは優先順位をつけます
  • 事実 — 製品名の正式な表記、使ってよい数字とその根拠、顧客名を出せるかどうか。制作会社は社内の事情を知らないため、ここが曖昧だと確認のたびに直しが入ります
  • NG表現 — 競合との比較、効果を言い切る表現、業界の規制で使えない言葉、社内で避けている言い回しなど

この3つを最初に一覧で渡しておけば、制作会社は言葉選びに集中できます。依頼前に決めておくことは、インタビュー動画を依頼する前に決める7つのことも参考になるはずです。

制作会社が書く3つのこと

制作会社が担うのは、材料を動画の言葉に組み直す作業です。限られた秒数の中で何を削るか、どの順番で言えば伝わるか、映像のどこで言葉を重ねるかは、制作に慣れた人のほうが判断しやすい部分でしょう。

社内で作る場合

内製では、同じ人が両方を担当することになります。材料を書く日と、言い回しを直す日を分けるのがおすすめです。書いた直後は、自分の文章の分かりにくさに気づきにくいためです。


台本を書く前に決める4つのこと

書き始める前に、次の4つを決めておくと、台本の長さと文体が決まります。

  1. 目的 — 見た人にしてほしい行動を1つに絞る
  2. 見る人 — 業種、役職、その動画を見る段階
  3. 尺 — 置き場所に合わせた長さ。尺が決まると、入れられる言葉の量も決まる
  4. 音の有無 — 音を出して見られるか。SNSや展示会のように音なしで見られる場所では、ナレーションよりテロップが主役になる

目的と見る人の決め方は、BtoBの動画マーケティングの進め方で詳しく扱っています。動画の種類ごとの尺の目安は、BtoBで使う動画の種類と選び方にまとめました。


台本のひな形 — 1本の台本に入れる項目

台本の書式に決まりはありませんが、次の項目がそろっていれば、確認する人も制作する人も迷いにくくなります。

表紙に書くこと

  • 動画の名前と版数(第1稿、第2稿など)
  • 尺と置き場所
  • 目的と見る人(1行ずつ)
  • 確認者と、最終的に判断する人
  • 変更の締め切り日

シーンごとに書くこと

  • シーン番号と秒数
  • 映像(何が映っているか)
  • ナレーションまたはセリフ
  • テロップ
  • 備考(読み方、出典、確認が必要な点)

60秒のサービス紹介動画を例にすると、本文は次のような形になります。

秒数映像ナレーションテロップ
0〜5秒担当者が資料を探す様子毎月の集計に、何時間かけていますか毎月の集計作業
5〜20秒現場の作業の様子手作業の集計は、転記のたびに確認が必要です転記と確認の手間
20〜45秒製品の画面〇〇なら、データを取り込むだけで集計が終わります取り込むだけで集計
45〜60秒ロゴと問い合わせ先まずは資料で、詳しい機能をご覧ください資料ダウンロード
秒数 — 0〜5秒映像担当者が資料を探す様子ナレーション毎月の集計に、何時間かけていますかテロップ毎月の集計作業
秒数 — 5〜20秒映像現場の作業の様子ナレーション手作業の集計は、転記のたびに確認が必要ですテロップ転記と確認の手間
秒数 — 20〜45秒映像製品の画面ナレーション〇〇なら、データを取り込むだけで集計が終わりますテロップ取り込むだけで集計
秒数 — 45〜60秒映像ロゴと問い合わせ先ナレーションまずは資料で、詳しい機能をご覧くださいテロップ資料ダウンロード

ナレーションとテロップは、同じ言葉を並べるのではなく、テロップを短い要点にするのが基本です。耳で聞く言葉と目で読む言葉を分けておくと、どちらか一方だけでも内容が伝わります。


耳で聞いて分かる文の作り方

ここからは、台本の文章そのものの書き方です。文化審議会が2022年に建議した「公用文作成の考え方」は書き言葉の手引きですが、一文の長さや言葉の選び方について、台本にもそのまま使える考え方が示されています。

一文を短くし、言うことを1つにする

「公用文作成の考え方」では、適当な長さは一概に決められないとしたうえで、一文が50〜60字ほどになってきたら読みにくくなっていないか意識するとよいとしています。あわせて、一文の論点は1つにすることも勧めています。

耳で聞く文は、読み返すことができません。台本では、書き言葉よりさらに短めを意識するとよいでしょう。

  • 書き言葉のまま — 当社のサービスは、導入企業の業務時間を削減するだけでなく、ミスの防止にもつながり、多くの企業で使われています
  • 台本向け — このサービスで、業務の時間が減ります。転記のミスも防げます

主語と述語を近づけ、修飾する言葉を前に長く積まないことも大切です。

同じ音の言葉と、硬い漢語を言い換える

同じ「公用文作成の考え方」では、同音の言葉は正しく書かれていても、耳で聞いた場合に区別が付かないことがあると指摘されています。口頭で伝える場面を想定し、意味の分かる言葉に言い換えるよう勧めています。

台本でよく出てくるのは、次のような言葉です。

  • 同じ音の言葉 — 「かがく(科学と化学)」「こうせい(構成と校正)」「しじ(指示と支持)」など。前後の文脈で区別できないときは、別の言葉に置き換えます
  • 硬い漢語 — 「実施する」は「行う」、「削減する」は「減らす」、「把握する」は「つかむ」のように、和語に近い言葉にすると聞き取りやすくなります
  • 略語と英字 — 社内で通じる略語は、初めて出るときに正式な名前で言います。英字の製品名やサービス名は、台本に読み方をカタカナで書いておきます

数字は読み方まで台本に書く

数字は、聞き間違いが起きやすい部分です。

  • 桁の大きい数字は丸める — 「1,247社」より「約1,200社」のほうが耳に残ります。正確な数字はテロップで見せます
  • 一文に入れる数字は1つまで — 数字が続くと、聞いている人は前の数字を忘れます
  • 読み方を書く — 「1日」を「ついたち」と読むか「いちにち」と読むか、「2024年度」を「にせんにじゅうよねんど」と読むかなど、迷う読み方は備考欄に書いておきます
  • 単位をそろえる — 「%」と「割」、「千円」と「万円」が混ざると比べにくくなります

結論を先に言い、大事なことは繰り返す

文章では重複を削るのが基本ですが、動画では途中から見る人や、聞き逃す人がいます。冒頭で結論を言い、最後にもう一度言い直すくらいがちょうどよいこともあります。

声に出して読み、時間を測る

書き終えたら、必ず声に出して読みます。つかえる箇所は、聞く人にとっても分かりにくい箇所です。読む速さは話す人や動画の雰囲気によって変わるため、実際に読んで時間を測り、尺に収まらなければ言葉を削ります。速く読んで収めるのは避けたほうが無難です。



出演者が話す動画の台本 — 書きすぎない

社員や代表、顧客が出演して話す動画では、セリフを一言一句書いた台本は逆効果になることがあります。覚えた文章を話すと、どうしても読んでいる口調になるためです。

出演者が話す部分は、次のように書き分けてみてください。

  • 質問と、話してほしい要点 — 全文ではなく、箇条書きで2〜3点
  • 必ず入れてほしい言葉 — 製品名や、言い換えてほしくない用語
  • 言わないでほしいこと — NG表現の一覧から、出演者に関わるもの

正確さが求められる製品説明や画面操作はナレーションで全文を書き、人柄や考えを伝える部分は出演者の言葉に任せる、という分け方が現実的です。インタビューでの質問の組み立ては失敗しないインタビュー動画の質問項目10選で、出演者の選び方は社員インタビュー動画の出演者選びで紹介しています。顧客が出演する導入事例動画の台本の考え方は、導入事例動画の作り方を5ステップで解説を参考にしてください。


社内確認で崩れない進め方

台本は、社内の確認で何度も書き換わりやすい資料です。確認する人が増えるほど、それぞれの立場から言葉が足されていきます。中身を守るには、確認の順番と締め切りを先に決めておくことが欠かせません。

構成案の合意、事実の確認、表現と法務の確認、最終判断、台本の確定までの順番と、変更の締め切りを示した図
構成案の合意、事実の確認、表現と法務の確認、最終判断、台本の確定までの順番と、変更の締め切りを示した図

確認の順番を決める

おすすめは、次の順番です。

  1. 構成案の段階で、最終的に判断する人に一度見てもらう — 方向性がずれていないかだけを確かめます
  2. 事実の確認 — 製品担当者や営業が、数字、名称、表現の正しさを確かめます
  3. 表現と法務の確認 — 広報や法務が、NG表現や規制に関わる言葉を確かめます
  4. 最終判断 — 判断する人が、全体を通して確認します

最後に判断する人が初めて台本を見ると、方向性から変わってしまうことがあります。構成案の段階で一度見てもらうだけで、終盤の大きな書き直しは減らせます。

変更の締め切りを決める

台本の変更は、ナレーションの収録や撮影の前までに終えるのが原則です。収録したあとで言葉を変えると、録り直しが必要になり、費用と日数が増えます。表紙に締め切り日を書き、それ以降の変更は理由と影響を確認してから受けるようにしておくと安心です。

日程の組み方は、動画制作の納期を短縮する3つのポイントでも触れています。

修正の指示は、場所と理由を書く

「もう少し分かりやすく」という指示では、書き直す人は何を変えればよいか分かりません。どのシーンの、どの言葉を、なぜ変えたいのかを書いてもらうと、修正が一度で済みやすくなります。確認者が多いときは、指示を1つの資料にまとめて渡す担当者を決めておきましょう。


AIツールで下書きを作るときの注意

台本の下書きを、生成AIのツールで作る方法もあります。構成のたたき台や言い換えの候補を出すのには便利ですが、次の点は人が確かめる必要があります。

  • 事実 — 製品の機能や数字は、AIが作った文章のまま使わない
  • NG表現 — 効果を言い切る表現が入りやすいので、一覧と照らし合わせる
  • 社外秘の情報 — 未発表の情報や顧客名を、外部のツールに入力しない

下書きの手間は減らせても、発注者が書く3つのこと(伝えたいこと、事実、NG表現)は代わりにならない、と考えておくのがよいでしょう。


よくある質問

Q1. 台本は発注者が書かないといけませんか?

文章として仕上げる必要はありません。伝えたいこと、事実、NG表現の3つを材料として渡せば、制作会社が台本の形にまとめます。材料が具体的であるほど、初稿の精度は上がります。

Q2. ナレーションとテロップは同じ文章にしたほうがよいですか?

同じにしないのが一般的です。ナレーションは耳で聞いて分かる文に、テロップは目で一瞬で読める短い要点にします。音なしで見られる場所では、テロップだけで内容が伝わるかも確かめておきましょう。

Q3. 台本の確定後に、どうしても変更が出たらどうしますか?

まず、変更しないと事実と違ってしまうのか、より良くしたいだけなのかを分けて考えます。事実の誤りは直す必要がありますが、収録や撮影のやり直しが伴う場合は、費用と日程への影響を制作会社に確認してから判断しましょう。


まとめ

主要ポイント

  1. 台本は耳で聞くための原稿 — 構成案に言葉を入れる工程で、絵コンテと対になる
  2. 発注者は材料、制作会社は言葉を書く — 伝えたいこと、事実、NG表現は発注者の担当
  3. ひな形で項目をそろえる — 秒数、映像、ナレーション、テロップ、備考
  4. 一文は短く、言うことは1つ — 同じ音の言葉や硬い漢語は言い換え、数字は読み方まで書く
  5. 確認の順番と締め切りを先に決める — 判断する人には構成案の段階で一度見てもらう

次のステップ

  • 作る予定の動画について、伝えたいこと、事実、NG表現を一覧にしてみる
  • 確認する人と最終的に判断する人を書き出し、確認の順番を決める
  • 書いた台本を声に出して読み、時間を測る

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参考ソース

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