動画の修正指示の出し方 — 1回で伝わるフィードバックの書き方

動画の修正指示の出し方 — 1回で伝わるフィードバックの書き方

動画の修正指示を1回で伝えるための書き方を、タイムコードの付け方、指示シートのひな形、修正と追加作業の境目、修正回数の決め方、社内意見のまとめ方の順に整理しました。

制作会社から動画の初稿が届いたあと、修正のやり取りが何往復も続いてしまうことがあります。「もう少し明るい感じで」と伝えたのに、戻ってきた動画は思っていたものと違う。社内の別の人から新しい意見が出て、また直してもらう。そうしているうちに、契約で決めた修正回数を超えてしまった、という話も珍しくありません。

修正が長引く原因は、動画の出来よりも指示の伝え方にあることが多いものです。どこを、どう直してほしいのか、なぜ直したいのかが書かれていないと、制作会社は推測で直すしかありません。

この記事では、制作会社に動画を発注している担当者に向けて、1回で伝わる修正指示の書き方を整理します。タイムコードの付け方、指示シートのひな形、修正と追加作業の境目、契約で決める修正回数、社内の意見のまとめ方の順に見ていきましょう。


この記事でわかること

  1. 修正指示が伝わらない原因 — 場所、理由、意見のばらつき
  2. 1回で伝わる指示の4つの要素 — 場所、今の状態、直してほしいこと、理由
  3. タイムコードの書き方 — 秒単位で範囲を示す
  4. 修正と追加作業の境目 — 前の段階で合意した範囲かどうか
  5. 社内意見のまとめ方 — 窓口を1人にし、意見を整理してから渡す

修正指示が伝わらない3つの原因

修正のやり取りが長引くとき、原因はおおむね次の3つに分けられます。

  • 場所が分からない — 「途中のテロップ」「後半の映像」では、制作会社はどのカットを指しているのか探すところから始めることになります
  • 理由が分からない — 「この映像を差し替えてください」だけでは、何がよくなかったのかが伝わりません。差し替えた映像も同じ理由でまた直しになることがあります
  • 意見がばらばらに届く — 複数の確認者がそれぞれ制作会社に連絡すると、指示が食い違ったり、あとから新しい意見が届いたりします

1つ目と2つ目は書き方で、3つ目は社内の進め方で解決できます。順に見ていきます。

なお、動画の修正を減らすには、編集に入る前の段階で中身を固めておくことも欠かせません。言葉の部分は企業動画の台本の書き方、画面の見え方は動画の修正回数を減らす絵コンテの作り方で解説しています。この記事では、編集した動画が届いたあとの指示に絞ります。


1回で伝わる修正指示の4つの要素

修正指示は、1件ごとに次の4つをそろえて書くと伝わりやすくなります。

  1. 場所 — 何分何秒から何分何秒までか
  2. 今の状態 — その場所で、今どうなっているか
  3. 直してほしいこと — どう変えたいか。言葉で書きにくいときは参考になる例を添える
  4. 理由 — なぜ直したいのか
修正指示に入れる場所、今の状態、直してほしいこと、理由の4つの要素と、それぞれの書き方の例を示した図
修正指示に入れる場所、今の状態、直してほしいこと、理由の4つの要素と、それぞれの書き方の例を示した図

たとえば「テロップを変えてください」という指示は、4つの要素をそろえると次のようになります。

0分42秒〜0分48秒。テロップが「業務効率化を実現」になっている。「集計の時間を半分に」に変えてほしい。営業資料と表現をそろえたいため。

特に大切なのが理由です。理由が書かれていれば、制作会社は指示どおりに直すだけでなく、同じ理由で気になる箇所がほかにないかも確かめられます。指示した方法よりよい直し方を提案してもらえることもあるでしょう。

タイムコードの書き方

場所は、動画の再生時間で示します。編集の現場で使う時間の目印をタイムコードと呼び、編集ソフトでは時、分、秒、フレームを記号で区切って表示します。発注者の指示では、そこまで細かく書く必要はありません。

  • 秒単位で、始まりと終わりを書く — 「0分42秒〜0分48秒」のように範囲で示します。一点だけだと、どこまでを直すのかが分かりません
  • どの版の動画かを書く — 「第2稿」「1023版」のように、ファイル名や版数を指示の先頭に書きます。版が違うと、同じ秒数でも別の場面を指してしまいます
  • 全体に関わる指示は分ける — 音量やテロップの書体など、動画全体に関わることは「全体」と書き、秒数付きの指示と分けておきます
  • 画面に映っているものも添える — 「0分42秒〜0分48秒、工場の外観のカット」のように映っているものを一言添えると、秒数を書き間違えたときにも場所が伝わります

感覚の言葉を、具体的な言葉に置き換える

「明るい感じで」「もっとかっこよく」「テンポよく」といった言葉は、人によって受け取り方が違います。何を変えれば印象が変わるのかを考えて、具体的な言葉に置き換えてみてください。

感覚の言葉置き換えの例
明るい感じに映像の色味を明るく、音楽を軽いものに
テンポよく1カットを短く、間の沈黙を詰める
見やすくテロップの文字を大きく、表示時間を長く
高級感を書体を細く、画面の文字を減らす
感覚の言葉 — 明るい感じに置き換えの例映像の色味を明るく、音楽を軽いものに
感覚の言葉 — テンポよく置き換えの例1カットを短く、間の沈黙を詰める
感覚の言葉 — 見やすく置き換えの例テロップの文字を大きく、表示時間を長く
感覚の言葉 — 高級感を置き換えの例書体を細く、画面の文字を減らす

置き換えが難しいときは、「この動画の、この場面のような雰囲気」と参考になる映像を示すのも1つの方法です。


修正指示シートのひな形

指示はメールの文章で送るより、表の形にまとめると漏れが減ります。表計算ソフトや共有のドキュメントで、次のような項目を用意しておくとよいでしょう。

シートの冒頭に書くこと

  • 動画の名前と、確認した版(第2稿など)
  • 確認した人の名前と、確認した日
  • 修正を返す期限

指示ごとに書くこと

番号場所指示(今の状態、直してほしいこと、理由)区分
10分12秒〜0分15秒社名の表記が旧社名。新社名に。登記上の正式名称のため必須
20分42秒〜0分48秒テロップを「集計の時間を半分に」に。営業資料とそろえるため必須
31分05秒〜1分20秒インタビューが長く感じる。後半の繰り返しを詰められるか相談
4全体BGMがナレーションより大きく聞こえる箇所がある必須
番号 — 1場所0分12秒〜0分15秒指示(今の状態、直してほしいこと、理由)社名の表記が旧社名。新社名に。登記上の正式名称のため区分必須
番号 — 2場所0分42秒〜0分48秒指示(今の状態、直してほしいこと、理由)テロップを「集計の時間を半分に」に。営業資料とそろえるため区分必須
番号 — 3場所1分05秒〜1分20秒指示(今の状態、直してほしいこと、理由)インタビューが長く感じる。後半の繰り返しを詰められるか区分相談
番号 — 4場所全体指示(今の状態、直してほしいこと、理由)BGMがナレーションより大きく聞こえる箇所がある区分必須

区分の欄では、必ず直してほしい指示と、制作会社の意見を聞きたい相談を分けておきます。必須と相談を分けるだけで、制作会社は優先順位をつけやすくなり、相談の項目にはプロとしての意見を返しやすくなります。

番号を振っておくと、制作会社からの返事も「2は対応しました」「3はこう直しました」と番号で返ってくるため、確認の手間も減るはずです。


修正と追加作業の境目

修正のやり取りで行き違いが起きやすいのが、どこまでが契約の範囲の修正で、どこからが追加の費用がかかる作業なのか、という点です。目安になるのは、前の段階で合意した内容の範囲に収まっているかどうかです。

前の段階で合意した範囲の中の修正と、範囲を超える追加作業の例を左右に並べて比べた図
前の段階で合意した範囲の中の修正と、範囲を超える追加作業の例を左右に並べて比べた図
区分主な例
修正になりやすいテロップの誤字、合意した台本との違い、色味や音量の調整、カットの長さの微調整
追加作業になりやすい撮り直し、承認済みの構成や台本の変更、尺の大きな変更、素材の追加、別サイズ版の作成
区分 — 修正になりやすい主な例テロップの誤字、合意した台本との違い、色味や音量の調整、カットの長さの微調整
区分 — 追加作業になりやすい主な例撮り直し、承認済みの構成や台本の変更、尺の大きな変更、素材の追加、別サイズ版の作成

台本や絵コンテを承認したあとで「やはり構成を変えたい」となると、それは前の段階に戻ることになります。編集し直すだけでなく、場合によっては撮影からやり直しになるため、追加の費用と日数がかかるのが一般的です。

逆に、制作会社が台本や絵コンテと違う編集をしていた場合や、誤字のように制作側の誤りであれば、通常は契約の範囲で直してもらえるはずです。

法律の面では、一定の条件にあたる取引について、発注する側が受ける側に責任のない理由で内容を変えさせたり、受け取ったあとにやり直させたりして、受ける側の利益を不当に害することが禁じられています。2026年1月に施行された中小受託取引適正化法(取適法)や、フリーランスとの取引に関わる法律に、それぞれ規定があります。適用されるかどうかは取引の内容や会社の規模によって変わるため、判断に迷うときは法務の担当者に確認してください。いずれにしても、修正の範囲をあらかじめ決めておくことが、双方にとって行き違いを防ぐいちばんの方法です。


契約で決めておく修正回数と数え方

見積もりや契約の段階で、修正について次の点を決めておくと、あとで揉めにくくなります。

  • 修正の回数 — 何回まで追加の費用なしで直してもらえるか
  • 1回の数え方 — 「まとめて1度に出した指示を1回と数える」のか、「1件の指示を1回と数える」のか
  • どの段階での修正か — 台本、絵コンテ、編集の初稿など、段階ごとに回数を決めるのか
  • 上限を超えたときの費用 — 1回あたりの費用、または作業量に応じた費用の決め方
  • 確認の期限 — 動画が届いてから何営業日以内に指示を返すか

特に誤解が起きやすいのが、1回の数え方です。指示を小出しにすると、そのたびに1回と数えられ、回数がすぐに上限に達してしまうことがあります。社内の意見をまとめてから1度に返すのが基本です。

見積書で修正回数がどう書かれているかの確かめ方は動画制作の見積もりの読み方、修正の決まりと日程の関係は動画制作の納期を短縮する3つのポイントで紹介しています。



社内の意見を1つにまとめる進め方

修正指示がばらばらになる原因の多くは、社内の進め方にあります。確認する人が増えるほど、意見は増え、食い違いも出てきます。

窓口を1人に決める

制作会社とやり取りする窓口は、1人に決めておきます。確認者の意見はいったん窓口に集め、整理してから制作会社に渡します。確認者が直接制作会社に連絡すると、窓口の知らないところで指示が変わってしまうためです。

確認者ごとに見る観点を分ける

全員が全体を見ると、同じ箇所に違う意見が出やすくなります。確認者ごとに見る観点を分けておくと、意見がぶつかりにくくなります。

  • 製品や事業の担当者 — 名称、数字、説明の正しさ
  • 広報や法務 — 表現、権利、規制に関わる言葉
  • 最終的に判断する人 — 全体の方向性と、目的に合っているか

期限を決めて、1度にまとめる

確認の期限を決め、期限までに出た意見をまとめて1回で返します。期限を過ぎて出た意見は、次の版で確認する扱いにしておくと、小出しの指示を防げます。

食い違う意見は、窓口が決めてから渡す

「テロップを増やしたい」という意見と「テロップを減らしたい」という意見が両方出たとき、そのまま制作会社に渡しても判断できません。動画の目的に照らして、窓口か最終的に判断する人が決めてから伝えます。採用しなかった意見と理由を記録しておくと、あとで同じ議論を繰り返さずに済むでしょう。

好みと誤りを分ける

意見の中には、事実の誤りと、好みの違いが混ざっています。誤りは必ず直す必要がありますが、好みの違いは目的に照らして判断するものです。シートの区分の欄で「必須」と「相談」を分けておくと、この整理がしやすくなります。

最終的に判断する人が初稿で初めて動画を見ると、方向性から変わってしまうことがあります。構成案や台本の段階で一度見てもらうことは、インタビュー動画を依頼する前に決める7つのことでも触れている大切な準備です。


伝わりにくい修正指示の例と書き換え

最後に、よく見かける指示と、その書き換えの例をまとめます。

伝わりにくい指示書き換えの例
全体的にいまいち冒頭の15秒で、何の動画か分かりにくい。最初にサービス名を出したい
ここ直してください1分10秒〜1分14秒、ナレーションの「こうせい」が構成か校正か聞き分けにくい
もっと短く全体を90秒から60秒に。展示会のモニターで流すため
前の方がよかった0分30秒〜0分35秒、第1稿の映像に戻したい。製品が大きく映っていたため
伝わりにくい指示 — 全体的にいまいち書き換えの例冒頭の15秒で、何の動画か分かりにくい。最初にサービス名を出したい
伝わりにくい指示 — ここ直してください書き換えの例1分10秒〜1分14秒、ナレーションの「こうせい」が構成か校正か聞き分けにくい
伝わりにくい指示 — もっと短く書き換えの例全体を90秒から60秒に。展示会のモニターで流すため
伝わりにくい指示 — 前の方がよかった書き換えの例0分30秒〜0分35秒、第1稿の映像に戻したい。製品が大きく映っていたため

書き換えの例はどれも、場所、直してほしいこと、理由のいずれかが加わっています。指示を送る前に、4つの要素がそろっているかを読み返してみてください。

確認の環境もそろえる

指示の中身と同じくらい、確認する環境も大切です。

  • 見る環境で確認する — スマートフォンで見られる動画はスマートフォンで、展示会で流す動画は大きな画面で確認します
  • 音を出して確認する — 音量のばらつきやナレーションの聞き取りにくさは、音を出さないと気づけません
  • 再生位置にコメントできるツールを使う — 制作会社によっては、動画の再生位置に直接コメントを書き込める確認用のツールを用意しています。使えるなら、秒数の書き間違いを防げます

よくある質問

Q1. 修正指示は口頭で伝えてもよいですか?

打ち合わせで口頭で話すのは、意図を伝えるうえで役に立ちます。ただし、話した内容は必ずシートやメールに残しておきましょう。口頭だけだと、何を直すことになったのか、あとで確かめられなくなります。

Q2. 修正回数の上限を超えそうなときはどうすればよいですか?

まず、残っている指示が誤りの修正なのか、好みや方針の変更なのかを分けます。そのうえで、上限を超える分の費用と日程への影響を制作会社に確認し、社内で判断しましょう。指示をまとめ直して1回に収められないかを相談するのも1つの方法です。

Q3. 制作会社の提案と社内の意見が違うときはどうしますか?

制作会社の提案の理由を聞いたうえで、動画の目的に照らして判断します。最終的に決めるのは発注者ですが、見る人に伝わるかどうかという点では、制作会社の意見が参考になる場面も多いものです。シートの「相談」の区分を使って、意見を聞いてから決めるとよいでしょう。


まとめ

主要ポイント

  1. 修正が長引く原因は伝え方にある — 場所、理由、意見のばらつき
  2. 指示は4つの要素で書く — 場所、今の状態、直してほしいこと、理由
  3. 場所は秒単位の範囲と版数で示す — 映っているものを一言添える
  4. 修正と追加作業の境目は、前の段階の合意 — 承認後の構成変更や撮り直しは追加になりやすい
  5. 社内の意見は窓口がまとめて1回で返す — 観点を分け、食い違いは決めてから渡す

次のステップ

  • 修正指示シートのひな形を作り、次の案件で使ってみる
  • 契約書や見積書で、修正の回数と1回の数え方を確かめる
  • 確認者と、それぞれが見る観点を決めておく

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参考ソース

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