BtoBの動画広告の作り方 — 媒体別の尺と最初の5秒の設計

BtoBの動画広告の作り方 — 媒体別の尺と最初の5秒の設計

BtoBの動画広告を、配信設定ではなく制作の側から整理しました。媒体別の尺と縦横比、最初の5秒の設計、1回の撮影から複数の広告素材を作り分ける方法、広告のあとに置くページまで解説します。

BtoBの動画広告について調べると、媒体の選び方やターゲティングの設定を解説した記事が多く見つかります。配信の設定はもちろん大切ですが、広告として流れる動画そのものの作り方まで書かれたものは、意外と少ないのではないでしょうか。

動画広告は、同じ1本の動画をすべての媒体に流せばよいわけではありません。媒体ごとに尺の上限や推奨の縦横比が違い、スキップされるまでの時間も違います。1回の撮影で、尺違い・縦横違いの素材をまとめて作れるように設計しておくことが、制作費を抑えながら広告を続けるための近道です。

この記事では、広告を担当するマーケティング担当者に向けて、媒体別の尺と縦横比、最初の5秒で伝えること、尺ごとの構成、1回の撮影から素材を作り分ける方法、広告のあとに置くページを順に整理します。動画マーケティング全体の進め方は、BtoBの動画マーケティングの進め方にまとめています。


この記事でわかること

  1. BtoBの動画広告が担う役割 — 市場の動きと、BtoBでの位置づけ
  2. 媒体別の尺と縦横比 — YouTubeとLinkedInの公式仕様
  3. 最初の5秒の設計 — 冒頭で伝える3つのこと
  4. 尺ごとの構成 — 6秒、15秒、30秒の組み立て
  5. 1回の撮影から作り分ける方法 — 撮影前に決める素材の一覧
  6. 広告のあとに置くページと、効果の見方

BtoBの動画広告が担う役割と市場の動き

動画広告の市場は伸び続けている

CARTA HOLDINGS、電通、電通デジタル、セプテーニの4社による「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」では、2025年のビデオ(動画)広告は前年比121.8%の1兆275億円となり、推定開始以降初めて1兆円を超えました。

サイバーエージェントがデジタルインファクトと実施した「2025年国内動画広告の市場調査」でも、2025年の動画広告市場は前年比122.2%の8,855億円と推計されています。そのうち縦型動画広告は前年比155.9%の2,049億円で、スマートフォン向け動画広告全体の29.1%にあたります。

どちらも消費者向けを含む市場全体の数字で、BtoBに限ったものではありません。ただ、広告の受け手が縦型の画面で動画を見ることに慣れてきている点は、BtoBの素材づくりでも前提にしておく必要があるでしょう。

BtoBでも広告は動画の主な使い道の1つ

動画制作会社のアルファノートが2026年6月に実施した「BtoB企業における動画マーケティングの実態調査」(動画マーケティングを実施しているBtoB企業の担当者500名が対象)では、動画の活用シーンとして「WEB広告」を挙げた人が46.0%で、「YouTube・SNS」の48.6%に次ぐ2番目でした。来期以降に制作を予定している動画でも、「WEB広告用の動画」が34.4%となっています。

広告で狙うのは、知ってもらうことと次の一歩

BtoBの商材は検討期間が長く、関わる人も複数います。動画広告を1回見ただけで問い合わせに至ることは多くありません。BtoBの動画広告が担うのは、主に次の2つです。

  • 知ってもらう — 課題を抱えている人に、社名やサービス名と、何を解決するのかを覚えてもらう
  • 次の一歩に進んでもらう — 資料のダウンロードやウェビナーへの申し込みなど、営業と話す前の軽い行動につなげる

どちらを狙うかで、尺も構成も、広告のあとに置くページも変わります。最初に1つに決めてから制作に入りましょう。


媒体別の尺と縦横比 — 公式ヘルプで確かめる

BtoBで検討されることの多い媒体のうち、YouTube(Google広告)とLinkedInについて、公式ヘルプに書かれている尺と縦横比を整理します。仕様は変わることがあるので、入稿前に必ず最新のページで確かめてください。

YouTube(Google広告)

Google広告ヘルプの「動画広告フォーマットの概要」では、YouTubeの主な広告フォーマットの長さが次のように案内されています。

フォーマット長さの目安見られ方
スキップ可能なインストリーム上限なし(推奨は3分未満)再生から5秒でスキップできる
スキップ不可のインストリーム15〜60秒(サブタイプで異なる)最後まで再生される
バンパー6秒(最短5秒以上)スキップできない
YouTubeショート推奨は60秒未満スワイプですぐ飛ばせる
フォーマット — スキップ可能なインストリーム長さの目安上限なし(推奨は3分未満)見られ方再生から5秒でスキップできる
フォーマット — スキップ不可のインストリーム長さの目安15〜60秒(サブタイプで異なる)見られ方最後まで再生される
フォーマット — バンパー長さの目安6秒(最短5秒以上)見られ方スキップできない
フォーマット — YouTubeショート長さの目安推奨は60秒未満見られ方スワイプですぐ飛ばせる

縦横比は、同じくGoogle広告ヘルプの「動画広告の仕様とフォーマットの要件」に、横向き(16対9)、縦向き(9対16)、スクエア(1対1)の3つが示されています。動画リーチキャンペーンの推奨の長さは、横向きがスキップ可能なインストリームとインフィードで15秒、バンパーで6秒、縦向きのショートが6〜60秒です。インフィード動画広告では、3つの向きとも15秒が推奨されています。

LinkedIn

LinkedInのヘルプ「動画広告の広告仕様」では、動画の長さは3秒から30分までとされ、フィードとパートナーネットワークのすべての広告枠に対応できるよう15〜30秒の動画が勧められています。縦横比は横長(16対9)、正方形(1対1)、縦長(4対5と9対16)に対応し、4対5が推奨比率として示されています。

30秒未満の動画は、再生時間が少なくとも30秒になるまでループ再生される仕組みです。字幕はSRT形式のファイルで付けられます。

Meta(Facebook、Instagram)

Metaの広告は、フィード、ストーリーズ、リールなど配置ごとに推奨の縦横比や長さが異なります。配置を決めたら、Metaの広告ガイドでその配置の仕様を確かめてから書き出すのが安全です。

制作側から見たまとめ

公式の仕様を並べると、制作側で用意しておきたい素材は見えてきます。横長の15秒と6秒、縦長の15〜60秒、そしてLinkedInやMetaのフィード向けの正方形または4対5です。尺は6秒・15秒・30秒前後、向きは横・縦・正方形系の組み合わせを、1回の撮影から作れるようにしておくと、多くの媒体に対応できます。向きごとの特徴は、動画の縦横比の選び方で詳しく扱っています。


最初の5秒で伝える3つのこと

YouTubeのスキップ可能なインストリーム広告は、再生から5秒でスキップできるようになります。ショート広告はスワイプですぐに飛ばせるので、残された時間はさらに短いと考えたほうがよいでしょう。BtoBの動画広告では、冒頭の5秒に次の3つを入れておきます。

  1. 誰に向けた広告か — 「経理の担当者の方へ」「工場の設備保全を担当している方へ」のように、見る人が自分のことだと気づける言葉
  2. どんな困りごとを扱うか — 「月末の集計に追われていませんか」のように、その人が抱えていそうな課題
  3. 誰が言っているか — 社名、サービス名、ロゴ

Googleが公開している「効果的な動画広告制作の ABCD」でも、ストーリーの核心へ早い段階で迫ることと、冒頭からブランドや商品を見せて最後まで保つことが勧められています。BtoBの場合、社名だけを大きく出しても、見る人には自分に関係があるかどうか分かりません。対象と課題を先に言い、社名はその横に添えるくらいの順番が伝わりやすいはずです。

冒頭でやらないほうがよいこと

  • ロゴのアニメーションだけで数秒使う — 何の広告か分からないまま5秒が過ぎてしまいます
  • 会社の沿革や理念から始める — 知らない会社の話は、課題とつながるまで聞いてもらえません
  • 音声だけで課題を語る — 音を出さずに見る人には伝わりません。課題の一言は、テロップでも画面に出しておきます

Googleの同じガイドでは、音声とテキストでメッセージを補強することも挙げられています。冒頭の言葉は、ナレーションとテロップの両方で伝えるようにしておくと安心です。耳で聞いて分かる言葉の作り方は、企業動画の台本の書き方にまとめました。


尺ごとの構成 — 6秒、15秒、30秒

尺が変わると、入れられる情報の量が変わります。長い動画を短く切るのではなく、尺ごとに伝えることを決めておくのが基本です。

15秒の動画広告を、0〜5秒の対象と課題、5〜12秒の解決の見せ方、12〜15秒の社名と次の行動の3つに分けた構成の図
15秒の動画広告を、0〜5秒の対象と課題、5〜12秒の解決の見せ方、12〜15秒の社名と次の行動の3つに分けた構成の図

6秒(バンパー)は1つだけ伝える

6秒では、説明はほとんどできません。対象と課題の一言、または製品の画面と社名の1つだけを見せます。15秒や30秒の広告を見た人に、名前を思い出してもらう役割で使うと、短さが生きてきます。

15秒は課題、解決、社名と行動

15秒は、BtoBの動画広告で最も使い回しの利く長さです。次の3つに分けて組み立てます。

  • 0〜5秒 — 対象と課題。誰の、どんな困りごとかを言い切る
  • 5〜12秒 — 解決の見せ方。製品の画面、作業の前後の比較、使っている人の様子など、映像で分かる場面を1つ
  • 12〜15秒 — 社名と次の行動。「資料で詳しく」「ウェビナーで解説」のように、軽い行動を1つだけ示す

30秒前後は理由を1つ足す

30秒あれば、解決の理由や根拠を1つ足せます。導入した会社の担当者の一言や、操作の流れを短く見せる場面が入れやすい長さです。LinkedInの推奨(15〜30秒)にも収まります。ただし、伝えることを増やすほど冒頭の5秒が薄くなりがちなので、構成の最初は15秒と同じにしておきましょう。

長尺は広告より自社サイトや商談で

1分を超える説明動画を広告で流すこともできます。とはいえ、知らない会社の長い動画を最後まで見てもらうのは簡単ではありません。長い説明は、広告のあとに見てもらうページや、商談前に送る動画に回すのが現実的です。商談前の動画の構成はBtoBの営業動画の作り方で解説しています。



1回の撮影から尺違い・縦横違いを作り分ける

広告の素材は、媒体の数と尺の数だけ必要になります。1本ずつ別に撮っていては費用も日数もかかるため、1回の撮影から編集で作り分けられるように、撮影の前に設計しておきます。

1回の撮影から、横長の30秒と15秒と6秒、縦長の15〜60秒、正方形または4対5のフィード向けを作り分ける流れを示した図
1回の撮影から、横長の30秒と15秒と6秒、縦長の15〜60秒、正方形または4対5のフィード向けを作り分ける流れを示した図

撮影前に、作る素材の一覧を決める

撮影の前に、どの媒体に、どの尺と向きの素材を出すかを一覧にしておきます。例を挙げると次のとおりです。

素材向き尺主な出し先
本編横長30秒前後YouTube、LinkedIn
短縮版横長15秒YouTubeのインストリーム
バンパー横長6秒YouTube
縦型縦長15〜60秒YouTubeショート、Meta
フィード版正方形か4対515〜30秒LinkedIn、Meta
素材 — 本編向き横長尺30秒前後主な出し先YouTube、LinkedIn
素材 — 短縮版向き横長尺15秒主な出し先YouTubeのインストリーム
素材 — バンパー向き横長尺6秒主な出し先YouTube
素材 — 縦型向き縦長尺15〜60秒主な出し先YouTubeショート、Meta
素材 — フィード版向き正方形か4対5尺15〜30秒主な出し先LinkedIn、Meta

一覧があれば、撮影で押さえるべきカットが決まります。撮影が終わってから「縦型も欲しい」となると、使える素材が足りないことが多いものです。

縦にも切り抜ける画角で撮る

横長の映像を縦長に切り抜くと、使えるのは画面の中央の一部だけになります。出演者や製品を画面の中央付近に置き、上下に余白を残して撮れば、縦にも正方形にも切り抜けます。カメラを2台使えるなら、1台は横長の引き、もう1台は縦型を前提に寄った画角にしておくと、切り抜いたときの画質を保ちやすくなるでしょう。

製品の画面を見せる場合は、画面録画を横長と縦長の両方で用意するか、縦の画面でも読める大きさに拡大して使えるよう、操作の範囲を小さくまとめておきます。

冒頭の一言を、尺ごとに撮り分ける

最初の5秒に入れる言葉は、尺によって変わることがあります。6秒では対象と課題を一言で、15秒ではもう少し具体的に、という具合です。冒頭の言い方を2〜3通り撮っておくと、編集で尺に合わせて選べます。広告の差し替えを考えても、冒頭の違うパターンがあるのは便利です。

テロップは縦と横で作り直す

テロップは、横長の画面で作ったものを縦長にそのまま流用すると、文字が小さくなったり、画面の端で切れたりします。縦型では1行の文字数を減らし、画面の上下に置くなど、向きごとに作り直すのが基本です。ショート動画の冒頭の作り方は、BtoB企業のショート動画活用も参考になります。

出演者と素材の使用範囲を先に確認する

社員や顧客が出演する場合は、広告として配信すること、尺違いや縦型に編集して使うことを、撮影前に伝えて了承を得ておきます。顧客が出演する導入事例動画を広告に使うときの考え方は、導入事例動画の作り方を5ステップで解説を参考にしてください。社員が出演する場合の扱いは、社員が出演する動画の肖像権と著作権で解説しています。


広告のあとに置くページ

動画広告をクリックした人が最初に見るページは、広告と同じくらい大切です。広告で示した課題と、ページの最初に書かれていることがずれていると、すぐに離れてしまいます。

  • 広告で言った課題を、ページの最初にもう一度書く — 広告の冒頭の一言と同じ言葉を見出しに使うと、来た人が迷いません
  • 行動は1つに絞る — 資料のダウンロードなら、フォームまでの道筋を1本にします
  • フォームの項目を増やしすぎない — 知ってもらう段階の広告なら、入力の手間は少ないほうが進みやすくなります
  • 広告の動画をページにも置く — 広告を最後まで見ていない人にも、同じ内容を見てもらえます

採用向けの例ですが、動画とページの組み合わせ方は採用動画と採用LPの相乗効果でも紹介しています。


効果の見方と、素材を差し替える判断

動画広告の効果は、配信の画面で見られる数字と、自社サイトやCRMで見る数字に分けて確かめます。

  • 広告の画面で見る数字 — 表示回数、視聴率、最後まで見られた割合、クリック率
  • 自社サイトで見る数字 — 広告から来た人のページの閲覧、資料のダウンロードやフォームの送信
  • 営業の数字 — 広告経由のリードが商談や受注につながったか

素材の差し替えを考えるときは、冒頭の5秒だけを変えたパターンを比べるのが手軽です。同じ本編で冒頭だけ違う2本を流し、視聴率やクリック率の差を見れば、どの言葉が対象の人に届いているかが分かります。1回の撮影で冒頭の言い方を撮り分けておく理由の1つです。

KPI(重要業績評価指標)の決め方と、広告の数字を商談につなげて見る方法は、動画マーケティングの効果測定で詳しく扱っています。広告費を含めた年間の配分は、動画マーケティングの予算の決め方にまとめました。


よくある質問

Q1. BtoBの動画広告は、どの媒体から始めればよいですか?

見てほしい相手がどこにいるかで選ぶのが基本です。職種や業種で絞って届けたいならLinkedIn、検索や関連動画の流れで広く知ってもらいたいならYouTubeが候補になります。どちらから始める場合でも、横長の15秒と縦長の素材があれば、あとから媒体を足しやすくなります。

Q2. 会社紹介動画をそのまま広告に使ってもよいですか?

使うことはできますが、冒頭の作りを見直したほうがよいでしょう。会社紹介動画は、社名や理念から始まる構成が多く、最初の5秒で誰に向けた話かが伝わりにくいためです。冒頭だけ広告用に作り直し、本編から使える場面を15秒や6秒に組み直す方法があります。

Q3. 広告用に撮影するとき、何パターン作ればよいですか?

まずは横長の15秒と6秒、縦長の15〜30秒の3つを基本にするのがおすすめです。そのうえで、冒頭の言い方を2通り用意しておくと、配信しながら比べられます。媒体を増やすときは、撮影前に作った素材の一覧に足していきましょう。


まとめ

主要ポイント

  1. BtoBの動画広告は、知ってもらうことと次の一歩のため — 1回で問い合わせを狙わず、軽い行動につなげる
  2. 尺と縦横比は公式ヘルプで確かめる — YouTubeはバンパー6秒、スキップは5秒から。LinkedInは15〜30秒が推奨
  3. 最初の5秒に対象、課題、社名を入れる — 社名は対象と課題の横に添える
  4. 尺ごとに伝えることを決める — 6秒は1つ、15秒は課題と解決と行動、30秒は理由を1つ足す
  5. 1回の撮影から作り分ける — 素材の一覧、縦にも切り抜ける画角、冒頭の撮り分け、向きごとのテロップ
  6. 広告のあとのページと効果の見方まで決める — 冒頭だけ違うパターンで比べる

次のステップ

  • 出したい媒体を決め、公式ヘルプで尺と縦横比を確かめる
  • 作る素材の一覧(向き、尺、出し先)を表にする
  • 冒頭の5秒に入れる、対象と課題の一言を2通り書いてみる

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参考ソース

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