展示会のブースに大きなモニターを置き、会社紹介動画を流しているのに、通路を歩く人がほとんど足を止めてくれない。展示会を担当している方なら、一度は経験があるのではないでしょうか。
原因の多くは、動画の出来ではなく、会場での見られ方に合わせて作られていないことにあります。展示会の会場は騒がしく、ナレーションはほとんど聞こえません。通路を歩く人は、数歩のあいだに画面を横目で見るだけです。Webサイトや商談で見てもらう前提で作った動画を、そのまま流しても伝わりにくいのは当然かもしれません。
この記事では、展示会を担当するマーケティング・営業企画の方に向けて、ブースで流す会社紹介・製品動画の役割の分け方、尺の目安、音なし・遠目で伝わる作り方、モニターの置き方、会期後の使い方を順に整理します。動画マーケティング全体の進め方は、BtoBの動画マーケティングの進め方にまとめています。
この記事でわかること
- 展示会で動画が担う役割 — BtoB企業での使われ方
- ブースの動画を3つの役割に分ける方法 — 呼び込み、説明、商談
- 役割ごとの尺の目安
- 音なし・遠目で伝わる作り方 — テロップ、画面の構成、音量のルール
- モニターの置き方と、会期前の確認
- 既存の動画の作り直し方と、会期後の使い方
展示会で動画が担う役割
動画制作会社のアルファノートが2026年6月に実施した「BtoB企業における動画マーケティングの実態調査」(動画マーケティングを実施しているBtoB企業の担当者500名が対象)では、動画の活用シーンとして「展示会・イベント」を挙げた人が23.0%でした。動画活用の効果を最大3つまで選ぶ質問では、「展示会・イベントでの集客数の増加」が35.0%で最も多く、来期以降に制作を予定している動画でも「展示会・イベント用の動画」が24.4%となっています。
同じ調査は動画制作会社による自社調査で、回答は担当者の実感です。それでも、展示会での動画は、BtoB企業の担当者が効果を感じやすい使い道の1つといえそうです。
展示会のブースで動画が担う役割は、主に次の3つに分けられます。
- 足を止めてもらう — 通路を歩く人に、何の会社かを一瞬で伝え、近づいてもらう
- 説明員の代わりに話す — 説明員がほかの来場者と話しているあいだも、製品の要点を伝え続ける
- 商談の説明を助ける — 画面の操作や導入の流れなど、言葉だけでは伝えにくい部分を見せる
この3つは、見る人の距離も、見ている時間も違います。1本の動画にすべてを任せようとすると、どれも中途半端になりがちです。
ブースの動画は3つの役割に分ける
展示会の動画は、置き場所と役割で分けて考えます。ブースの外側から内側へ、来場者との距離が近くなるほど、長く詳しい動画を見てもらえるようになります。

| 役割 | 置き場所 | 見る人の状態 | 音 |
|---|---|---|---|
| 呼び込み用 | 通路に面した大型モニター | 歩きながら横目で見る | なしで伝わる作り |
| 説明用 | ブースの中のモニター | 立ち止まって見る | なしでも伝わる作り |
| 商談用 | 商談席のモニターやタブレット | 座って説明員と見る | 説明員の話が主 |
呼び込み用は、何の会社かを伝える
通路に向けたモニターで流す動画です。役割は、詳しく説明することではなく、「自分に関係がありそうだ」と思ってもらい、ブースに近づいてもらうことにあります。社名と、誰のどんな課題を解決する会社かが、遠くからでも読めることが大切です。
説明用は、説明員の代わりに要点を話す
ブースの中に入った人が、説明員を待つあいだや、パネルを見ながら目にする動画です。製品の特長や使う場面を、短い章に分けて見せます。説明員が別の来場者と話していても、要点が伝わる状態を作るのが目的です。
商談用は、説明員と一緒に見る
商談席で、説明員が来場者と話しながら見せる動画です。画面の操作、導入までの流れ、導入した会社の声など、話の内容に合わせて必要な部分だけを見せます。最初から最後まで流すより、章ごとに止めて使えるように作っておくと便利です。
商談で見せる動画の構成は、BtoBの営業動画の作り方でも扱っています。導入した会社の声を伝える導入事例動画を展示会で使う方法は、導入事例動画を専門に扱うGlis 導入事例動画制作のサイトで紹介しています。
役割ごとの尺の目安
尺は、見る人がその場にいる時間に合わせて決めます。ここで挙げるのは、制作会社として提案することの多い目安です。
- 呼び込み用は15〜30秒をくり返す — 通路の人が画面を見るのは、ブースの前を通り過ぎる数歩のあいだです。どの瞬間に目に入っても、数秒で社名と課題が分かるように、短い内容をくり返し流します
- 説明用は1〜3分を章に分ける — 立ち止まった人でも、展示会では次のブースへ移るまでの時間は限られています。全体を1〜3分にまとめ、30秒前後の章ごとに1つのことを伝えると、途中から見ても内容がつかめます
- 商談用は長さより、止めやすさ — 説明員が話に合わせて使うので、全体の尺より、章の頭から再生できるかどうかが大切です
動画の種類ごとの尺の考え方は、BtoBで使う動画の種類と選び方にもまとめています。
くり返し再生では、始まりと終わりを作らない
呼び込み用の動画は、来場者が途中から見ることが前提です。冒頭に長いタイトル画面や、最後に黒い画面が続くと、その数秒は何も伝わりません。どこから見ても成り立つように、社名と課題の一言は、ずっと画面のどこかに出しておくのがおすすめです。
音なし・遠目で伝わる作り方
展示会の会場では、ナレーションやBGMはほとんど聞こえないと考えておきましょう。周りのブースの音や、来場者の話し声があるためです。動画は、音を消しても内容が伝わるように作ります。

テロップは大きく、短く
Webサイト向けの動画のテロップは、手元の画面で読む大きさで作られています。展示会では、モニターから数メートル離れた通路から見ることになるので、同じ大きさでは読めません。
- 1行の文字数を減らす — 通路から一瞬で読めるよう、ひと目で読める短い言葉にします
- 文字を大きくする — 画面の下に小さく入れるのではなく、画面の主役として置きます
- 話した言葉をそのまま字幕にしない — ナレーションの全文ではなく、要点だけをテロップにします
耳で聞く言葉と目で読む言葉の書き分け方は、企業動画の台本の書き方で詳しく解説しています。
1画面に1つのことだけ
遠くから見ると、画面の細かい部分はつぶれてしまいます。製品の画面を見せる場合も、全体を映すのではなく、見てほしい部分を拡大して見せます。1つの画面で伝えることは1つにして、文字と映像が重ならないよう配置しましょう。
文字と背景の差をはっきりさせる
会場の照明は明るく、モニターの画面は反射で見えにくくなることがあります。白い背景に薄い灰色の文字のような、差の小さい配色は避け、文字と背景の明るさに大きな差をつけます。会社のブランドカラーを使う場合も、遠くから読めるかを先に確かめておくと安心です。
動きで目を引く
人の目は、止まっている画面より動いている画面に向きやすいものです。呼び込み用の動画では、製品が動く様子や、作業の前後が切り替わる場面など、動きのある映像を中心に組み立てます。ただし、画面が速く切り替わりすぎると文字が読めないので、テロップの出ている場面は少し長めに見せましょう。
音を出すなら、会場のルールを確かめる
音を出したい場合は、主催者の出展者マニュアルを必ず確認しましょう。たとえばCEATECの出展マニュアルでは、音量の上限を80dB以下とし、ブースの境界線から2mの場所で測った音量を基準にすると定めています。スピーカーを近くのブースに向けないことや、音楽や映像の録音物を流す場合の著作権の処理についても、同じページに記載があります。
BGMに市販の楽曲を使うと、権利の処理が必要です。展示会で流す可能性がある動画は、制作の段階で、使ってよい範囲が明確な音源を選んでおくと手間が減ります。
モニターの置き方
同じ動画でも、置き方によって見られ方は大きく変わります。会場の図面を見ながら、次の点を決めておきましょう。
高さは、人の頭越しに見える位置に
ブースの前に人が集まると、腰の高さのモニターは隠れてしまいます。呼び込み用のモニターは、人の頭越しでも見える高さに置くのが基本です。説明用や商談用は、立って見る人、座って見る人の目の高さに合わせます。
向きは、人が流れてくる方向に
通路のどちらから人が多く来るかで、モニターの向きを決めます。角のブースなら、2つの通路の両方から見えるように置く方法もあります。ブースの奥の壁に1台だけ置くと、通路からは斜めにしか見えないことが多いので注意が必要です。
縦型のモニターも選べる
柱やパネルの幅が狭い場所では、縦型のモニターが使いやすい場合があります。縦型で流すなら、横長の動画をそのまま入れるのではなく、縦の画面に合わせて作り直しましょう。画面の向きの考え方は、動画の縦横比の選び方にまとめています。
会期前に、会場と同じ条件で確かめる
社内の会議室のモニターでは問題なく見えても、会場の照明や距離では読めないことがあります。可能なら、設営の日に通路の反対側まで下がって、テロップが読めるか、画面が反射していないかを確かめてください。再生機器の自動再生とくり返し再生の設定、電源を入れ直したときに再生が始まるかも、あわせて確認しておくと当日あわてずに済みます。
既存の動画を展示会用に作り直す
新しく撮影しなくても、手元の会社紹介動画や製品動画を作り直して使えることは多いものです。作り直すときは、次の順番で考えるとよいでしょう。
- 使える場面を選ぶ — 製品が動く場面、作業の前後、使っている人の様子など、音がなくても意味が分かる映像を拾い出す
- テロップを作り直す — ナレーションに頼っていた部分を、大きく短いテロップに置き換える
- 呼び込み用の短い版を作る — 選んだ場面から15〜30秒の版を作り、社名と課題の一言を常に出しておく
- 説明用は章に分ける — 元の動画を30秒前後の章に区切り、章ごとに見出しのテロップを入れる
これから会社紹介動画や製品動画を作る場合は、企画の段階で「展示会でも流す」と決めておくと、音なしで伝わる場面や、縦型にも使える画角を撮影に入れられます。会社紹介動画をWebサイトと組み合わせる考え方は、企業ブランディング動画の役割で紹介しています。展示会の日程から逆算した制作の進め方は、動画制作の納期を短縮する3つのポイントも参考になるでしょう。
会期後も動画を使い続ける
展示会のために作った動画は、会期が終わったあとも使い道があります。
- フォローのメールに添える — 名刺を交換した人に、ブースで流した説明用の動画を送ると、会場での話を思い出してもらいやすくなります
- WebサイトやYouTubeに置く — 説明用の章ごとの動画は、製品ページやYouTubeでもそのまま使えます
- ショート動画にする — 呼び込み用の短い版は、少し手を加えればSNS向けの縦型動画にもなります
会期後に送った動画がどれだけ見られ、商談につながったかを追えるようにしておくと、次の展示会で動画にかける費用を判断しやすくなるはずです。指標の決め方は、動画マーケティングの効果測定で詳しく扱っています。展示会の映像をYouTubeで活用する考え方は、動画マーケティングはYouTubeを軸にでも触れています。
よくある質問
Q1. 会社紹介動画が1本しかありません。展示会で流すならどうすればよいですか?
まずは音を消して、遠くから見て内容が伝わるかを確かめてみてください。伝わらない場合は、テロップを大きく短く作り直し、音がなくても分かる場面を選んで15〜30秒の短い版を作るのがおすすめです。1本の動画から、呼び込み用の短い版と、説明用の章に分けた版の2つを作れることもあります。
Q2. ナレーションは入れないほうがよいですか?
入れても問題はありません。ただし、会場ではほとんど聞こえないため、ナレーションがなくても内容が伝わるように作っておく必要があります。展示会のあとにWebサイトやメールでも使うなら、ナレーション入りの版と、テロップだけの版を分けて書き出しておくと使い分けられます。
Q3. 導入事例動画も展示会で流せますか?
流すことはできます。導入した会社の担当者の言葉は、検討中の来場者にとって判断の材料になりやすいものです。顧客が出演する動画を展示会で流すには、出演した会社の了承も必要になります。導入事例動画の作り方は、導入事例動画の作り方を5ステップで解説を参考にしてください。
まとめ
主要ポイント
- 展示会の動画は3つの役割に分ける — 呼び込み用、説明用、商談用で、置き場所も見る人の状態も違う
- 尺は見る人がその場にいる時間で決める — 呼び込み用は15〜30秒のくり返し、説明用は1〜3分を章に分ける
- 音なし・遠目で伝わるように作る — 社名と課題を常に出し、テロップは大きく短く、1画面に1つのこと
- 音を出すなら出展者マニュアルを確かめる — 音量の上限や測り方、楽曲の権利の処理
- モニターは高さと向きを決め、会期前に会場で確かめる
- 会期後もフォローのメールやWebサイトで使い続ける
次のステップ
- 次の展示会のブースの図面に、モニターを置く場所と役割を書き込む
- 手元の会社紹介動画を音なしで再生し、離れた場所から見て伝わるか確かめる
- 出展する展示会の出展者マニュアルで、音量と著作権のルールを確認する
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参考ソース
- BtoB企業における動画マーケティングの実態調査 2026年版(アルファノート、2026年6月) — 動画の活用シーン、動画活用の効果、今後の制作予定
- 音量規制・著作権処理(CEATEC 出展マニュアル) — 展示会の音量の上限と測り方、スピーカーの向き、著作権の処理
- Glis 導入事例動画制作 — 導入事例動画の展示会での活用