建設業の採用動画 — 若手と保護者に現場の仕事を伝える構成

建設業の採用動画 — 若手と保護者に現場の仕事を伝える構成

建設業の採用動画を、若手と保護者、高校の先生に現場の仕事を伝える視点で整理しました。職種ごとに見せる場面、構成と尺、現場で撮影するときの安全管理、高卒採用の日程に合わせた使い方を解説します。

建設業の採用担当者からは「求人を出しても若い人の応募が来ない」「会社説明会で仕事の中身がうまく伝わらない」という悩みがよく聞かれます。現場の仕事は、文章や写真だけでは伝わりにくいものです。重機の大きさ、職人同士の声のかけ方、できあがった建物を見上げたときの感覚は、動画のほうが伝えやすい部分でしょう。

一方で、建設業の採用動画には、ほかの業界とは違う前提があります。見るのは応募する若手本人だけではなく、保護者や高校の先生も見ていることです。高校生の就職は学校を通じて進むため、先生が生徒に紹介し、保護者が家で一緒に見るという場面も少なくありません。

この記事では、建設会社の採用担当者や経営者に向けて、業界の人手の状況、誰が動画を見るのか、職種ごとに見せる場面、構成と尺、現場で撮影するときの安全管理、採用の日程に合わせた使い方の順に整理します。


この記事でわかること

  1. 建設業の若手の状況 — 29歳以下が約1割という公的なデータ
  2. 採用動画を見る人 — 生徒、保護者、高校の先生がそれぞれ知りたいこと
  3. 職種ごとに見せる場面 — 施工管理と技能職の伝え方
  4. 構成と尺 — 本編と短い動画の分け方
  5. 現場撮影の安全管理 — 撮影前、当日、編集で確かめること
  6. 使う時期 — 高卒採用の日程に合わせた置き場所

建設業の若手の状況 — 29歳以下は約1割

最初に、建設業の人手の状況を公的なデータで確認しておきます。国土交通省が総務省の「労働力調査」をもとにまとめた資料によると、2024年(令和6年)の建設業の就業者は477万人です。年齢別に見ると、55歳以上が36.7%を占める一方、29歳以下は11.7%にとどまっています。全産業では55歳以上が32.4%、29歳以下が16.9%なので、建設業は高齢化が進み、若い世代が少ない業界だということが分かるでしょう。

厚生労働省の建設業向けのポータルサイトでも、建設業に入る新規学卒者は2009年の2.9万人を底に、直近は4万人前後で推移していると紹介されています。若手の入職がまったくないわけではなく、限られた人数を多くの会社で取り合っている状況に近いといえるでしょう。

働く環境にも変化が出ています。

  • 労働時間 — 建設業にも2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されています
  • 資格 — 施工管理技術検定は2024年度から受検資格が見直され、1級の第一次検定は、その年度の末に19歳以上であれば受検できるようになりました

こうした変化は、若手や保護者が「建設業はきつい」と感じている印象を見直してもらう材料になります。ただし、制度が変わったことと、自社の働き方が変わったことは別の話です。動画で伝えるのは、自社で実際に行っていることに限るのが原則です。


採用動画を見る人 — 生徒、保護者、高校の先生

建設業の採用動画は、応募する本人だけが見るものではありません。特に高校生を採用する会社では、少なくとも3者が見ると考えておくと構成を決めやすくなります。

厚生労働省によると、高校生向けの求人は、ハローワークで内容を確認したあとに学校へ提出されます。生徒が求人を知る入口は学校の進路指導であることが多く、先生が会社を紹介する場面で動画が役に立つはずです。

家庭での会話も見逃せません。リクルートと全国高等学校PTA連合会が2023年に高校2年生と保護者に行った調査では、進路について保護者と「話す」と答えた高校生は83.0%、子どもと「話す」と答えた保護者は89.4%でした。進学を考える生徒も含めた調査ですが、進路を決める場面で家族の意見が入りやすいことがうかがえます。

見る人主に知りたいこと動画で見せたいもの
生徒どんな仕事か、自分にできるか1日の流れ、年の近い先輩
保護者安全か、長く働けるか安全の取り組み、休み、育て方
高校の先生生徒を安心して紹介できるか教育の仕組み、資格の支援
見る人 — 生徒主に知りたいことどんな仕事か、自分にできるか動画で見せたいもの1日の流れ、年の近い先輩
見る人 — 保護者主に知りたいこと安全か、長く働けるか動画で見せたいもの安全の取り組み、休み、育て方
見る人 — 高校の先生主に知りたいこと生徒を安心して紹介できるか動画で見せたいもの教育の仕組み、資格の支援
生徒、保護者、高校の先生の3者が採用動画で知りたいことと、動画で見せたいものを並べた図
生徒、保護者、高校の先生の3者が採用動画で知りたいことと、動画で見せたいものを並べた図

3者の関心はそれぞれ違いますが、1本の動画にすべてを詰め込む必要はありません。本編で全体を伝え、保護者や先生が気にすることは章や別の短い動画で補う、という分け方が現実的です。

中途採用の場合も、家族が見ることは変わりません。転職を考える30代や40代では、配偶者が動画を見て判断に加わる場面もあるはずです。中途向けの伝え方は中途採用向け動画の作り方で扱っています。


若手に伝える現場の仕事 — 職種ごとに見せる場面

建設業の採用動画でよくあるのは、ドローンで撮った完成した建物や、迫力のある重機の映像が中心になってしまうことです。印象には残りますが、見た人は「自分がそこで何をするのか」を想像できません。職種ごとに、入社1年目から3年目くらいの人が実際にしている仕事を見せるのが基本です。

施工管理

施工管理は、外から見て仕事の中身が分かりにくい職種です。「現場監督」という言葉から、指示を出すだけの人を想像する生徒もいます。次のような場面を入れると、仕事の幅が伝わりやすくなります。

  • 朝礼で、その日の作業と危険な箇所を確認する様子
  • 図面を見ながら職人と段取りを話し合う様子
  • 現場事務所で写真や書類を整理する時間
  • 先輩と一緒に検査に立ち会う様子

事務所での作業も隠さずに見せておくと、入社後の「思っていたのと違う」を減らせるでしょう。

技能職

大工、鉄筋、型枠、設備、重機のオペレーターなどの技能職では、手を動かしている姿そのものが伝わる材料になります。そのうえで、次の2つを入れておくと安心感が生まれます。

  • 最初にする作業 — 入社してすぐの人が担当する作業と、先輩がそばで見ている様子
  • できるようになるまでの道筋 — 何年目でどんな作業を任されるか、取れる資格は何か

完成したものを見せる

最後に、自分たちが関わった道路、橋、建物などを見せると、仕事の意味が伝わります。「この橋は、自分が2年目のときに関わった」と先輩が語る場面は、建設業ならではの強い材料です。ただし、発注者の許可なく工事名や建物を特定できる形で出すことは避け、公開してよい範囲を確認しておきましょう。

出演する社員の選び方は社員インタビュー動画の出演者選びを参考にしてください。


保護者と先生が気にすること — 安全、休み、育て方

保護者と先生が動画で確かめたいのは、仕事の面白さよりも、安心して送り出せるかどうかです。次の3つを、自社で実際に行っている内容で伝えます。

安全への取り組み

厚生労働省のポータルサイトでは、建設業の労働災害は減少傾向にある一方で、死亡災害は全産業の中で最も多く、事故の型では墜落・転落が最多だと紹介されています。保護者が安全を気にするのは自然なことです。

朝礼での危険予知、保護具の点検、新人が一人で危険な作業をしない決まりなど、日々の取り組みを具体的に見せると伝わります。「安全第一」という言葉を掲げるだけでは、何をしているのかは分かりません。

休みと働く時間

週の休み、現場が終わる時間、長期休暇の取り方は、保護者が特に気にする部分です。制度の説明だけでなく、休日の過ごし方を若手社員に話してもらうと、生活の様子が伝わります。実際より良く見せると、入社後の早期離職につながるため、繁忙期があるならそのことも伝えておくほうが誠実です。

育て方と資格

先生が生徒を紹介するときに気にするのは、入社後に誰がどう教えるかです。

  • 入社後の研修の期間と内容
  • 先輩が1対1で付く仕組みがあるか
  • 資格取得の費用の補助や、試験前の勉強の支援
  • 寮や住宅の手当

施工管理技術検定の受検資格が見直されたことは、若いうちから資格を目指せる材料になります。自社でどう支援しているかとあわせて伝えましょう。


建設業の採用動画の構成と尺

ここまでの内容を、本編1本と短い動画に分けて組み立てます。本編は、会社説明会や学校訪問、採用サイトで使う3分前後を目安にするとよいでしょう。

章秒数の目安内容
冒頭0〜15秒現場の音と、つくっているもの
仕事15〜90秒若手社員の1日の流れ
成長90〜130秒先輩の指導、資格への道筋
安心130〜165秒安全の取り組み、休み、研修
締め165〜180秒完成したものと、見学の案内
章 — 冒頭秒数の目安0〜15秒内容現場の音と、つくっているもの
章 — 仕事秒数の目安15〜90秒内容若手社員の1日の流れ
章 — 成長秒数の目安90〜130秒内容先輩の指導、資格への道筋
章 — 安心秒数の目安130〜165秒内容安全の取り組み、休み、研修
章 — 締め秒数の目安165〜180秒内容完成したものと、見学の案内

冒頭では会社名や社長のあいさつから始めるより、現場の音や作業の様子から入るほうが、最後まで見てもらいやすくなります。代表のメッセージを入れる場合は、締めの近くに短く置くとよいでしょう。

本編とは別に、次のような短い動画を同じ撮影から作っておくと、置き場所ごとに使い分けられます。

  • 職種ごとの1日 — 施工管理、技能職などを1本ずつ、60秒程度
  • 保護者向けの安全と休みの説明 — 家庭で見てもらうための短い動画
  • 縦型の短い動画 — SNSや採用サイトのスマートフォン表示用

新卒向けの構成の考え方は新卒採用向け動画の作り方、インタビューを中心にした構成はインタビュー動画の作り方 — 採用向け5分尺の構成パターンにまとめています。採用以外も含めた動画の進め方は、BtoBの動画マーケティングの進め方をご覧ください。



現場で撮影するときの安全管理

建設現場での撮影は、オフィスでの撮影とは準備がまったく違います。撮影する人も現場に入る一人として、現場の安全のルールに従う必要があります。

撮影前、撮影当日、編集の3段階で、現場撮影の安全管理として確かめることを並べた図
撮影前、撮影当日、編集の3段階で、現場撮影の安全管理として確かめることを並べた図

撮影前に決めること

  1. 現場の責任者の許可 — 元請けの会社や発注者、現場の所長に、撮影する日時、場所、人数を伝えて了承を得ます
  2. 立ち入ってよい範囲 — 重機が動く範囲、高所、足場の上など、撮影者が入らない場所を図面で確認します
  3. 保護具と入場の手続き — ヘルメット、安全靴など、現場で決められた保護具を撮影者の分も用意します。新しく現場に入る人への教育を受ける必要があるかも確認します
  4. ドローンを使うか — ドローンで空撮する場合は、航空法の飛行ルールに沿って、機体の登録や、飛行する場所と方法によって必要になる許可や承認を確認します

撮影当日に気をつけること

  • 朝礼に参加し、その日の危険な作業と撮影の予定を共有する
  • 現場の案内役を1人決め、撮影者が単独で動かないようにする
  • 撮影のために作業を止めたり、危険な動きをやり直してもらったりしない
  • 機材やケーブルを通路に置かない

撮影のための演出が、現場の安全より優先されることはありません。作業の流れを妨げないよう、撮りたい場面は事前に工程表で確かめておきます。

映り込みと安全装備を編集で確かめる

建設業の採用動画で特に気をつけたいのは、映像に映った安全装備の不備です。あご紐が外れたヘルメットや、高い場所で安全帯を使っていない姿が映っていると、保護者や先生に不安を与えるだけでなく、会社の安全への姿勢そのものが疑われかねません。編集の段階で、現場をよく知る社員に全カットを確認してもらいましょう。

あわせて、次のような映り込みも確かめます。

  • 協力会社の社名や、出演を了承していない作業員の顔
  • 近隣の住宅、通行人、車のナンバー
  • 工事看板に書かれた発注者名や、公開前の建物の情報

撮影当日の段取りは動画撮影当日のチェックリスト、社員の出演に関わる権利の扱いは社員が出演する動画の肖像権と著作権で詳しく扱っています。


撮影の段取り — 工期と天候に合わせる

現場の様子は、工事の進み具合によって大きく変わります。基礎の工事、骨組みが立ち上がる時期、仕上げの時期では、映る作業も職種も違います。1回の撮影ですべてを撮ろうとせず、何を撮りたいかに合わせて時期を選ぶのが現実的です。

  • 工程表から撮りたい作業を選ぶ — 若手が主役になる作業がいつあるかを、現場の所長と相談します
  • 予備日を取る — 雨や強風で作業が止まる日に備え、予備日を最低1日は確保しておきます
  • 季節を意識する — 真夏の現場は大変さが伝わる一方、暑さ対策の取り組みを見せる機会にもなります
  • 複数の現場を組み合わせる — 職種ごとに別の現場で撮ると、仕事の幅が伝わります

インタビューは、現場とは別の日に事務所で撮ると、騒音を気にせず落ち着いて話してもらえます。


動画を使う時期 — 高卒採用の日程に合わせる

高校生の採用には、毎年決まった日程があります。厚生労働省によると、2026年度(令和8年度)の新規高卒者の採用選考は次の日程で進みます。

  1. 6月1日 — ハローワークでの求人申込書の受付開始
  2. 7月1日 — 企業から学校への求人申込と、学校訪問の開始
  3. 9月5日 — 学校から企業への応募書類の提出開始(沖縄県は8月30日)
  4. 9月16日 — 企業による選考と採用内定の開始

この日程から逆算すると、動画は6月中には仕上げておきたいところです。7月からの学校訪問で先生に見てもらい、夏休みの職場見学の前に生徒と保護者に見てもらう流れが作れます。

置き場所は、次のように分けて考えるとよいでしょう。

  • 学校訪問 — 先生にURLやQRコードを渡し、進路指導室で生徒に見せてもらう
  • 採用サイト — 本編と職種ごとの短い動画を並べ、家庭でも見られるようにする
  • 職場見学や会社説明会 — 本編を流し、そのあとで現場を案内する
  • 内定後 — 保護者向けの動画を送り、入社前の不安を減らす

採用サイトとの組み合わせ方は採用動画と採用LPの相乗効果、選考の段階ごとの使い方は内定承諾率を上げる動画の使い方、説明会での使い方は会社説明会を動画にする方法で紹介しています。


よくある質問

Q1. 現場の職人さんが出演を嫌がる場合はどうすればよいですか?

無理に顔を出してもらう必要はありません。手元の作業や後ろ姿だけでも、仕事の様子は十分に伝わります。話す場面は、出演に前向きな若手社員と、その指導役の先輩に絞るとよいでしょう。出演を頼むときは、どこで公開するかと、退職したあとの扱いを先に説明しておくと安心してもらえます。

Q2. スマートフォンで撮った動画でも採用に使えますか?

職種ごとの短い動画やSNS向けの動画なら、スマートフォンでも十分に使えます。一方で、学校訪問や説明会で流す本編は、会社の顔として長く使うものです。現場の騒音の中でも声をきれいに録るには機材と経験が必要なため、本編は外注し、日々の短い動画は社内で撮るという分け方が現実的です。

Q3. 新卒と中途で同じ動画を使ってもよいですか?

本編は共通で使い、知りたいことの違う部分を短い動画で分けるのがおすすめです。高校生や保護者には安全や育て方を、中途の応募者には経験をどう生かせるかや待遇を中心に伝えます。


まとめ

主要ポイント

  1. 建設業は若手が少ない業界 — 29歳以下の就業者は11.7%で、限られた若手を多くの会社で取り合っている
  2. 見る人は3者 — 生徒、保護者、高校の先生が、それぞれ違うことを知りたがっている
  3. 職種ごとに若手の仕事を見せる — 施工管理は事務所の作業も含めて、技能職は最初にする作業と成長の道筋を
  4. 安全、休み、育て方は実際の取り組みで伝える — 制度の変化と自社の実態は分けて話す
  5. 現場撮影は安全のルールが最優先 — 撮影前の許可と範囲の確認、編集での安全装備の確認まで行う

次のステップ

  • 自社で採用したい職種を挙げ、入社1年目の人の1日を書き出してみる
  • 保護者や先生から過去に受けた質問を集め、動画で答える内容を決める
  • 高卒採用の日程から逆算して、撮影と完成の時期を決める

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参考ソース

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