動画マーケティングの予算の決め方 — 年間で配分する考え方

動画マーケティングの予算の決め方 — 年間で配分する考え方

動画マーケティングの年間予算を、制作・広告配信・運用の3つに分けて考える方法を整理しました。決める順番、初年度と2年目の違い、予算が少ないときの優先順位、よくある質問までまとめています。

動画マーケティングの予算というと、まず「1本いくらで作れるか」が気になるものです。ところが、実際に1年間動画を使ってみると、制作費のほかに、広告で届ける費用や、公開した動画を運用する人の時間がかかっていることに気づきます。

予算を決める時期に、制作費だけを積んで計画を立てると、動画はできたのに届ける費用がない、担当者が手を回せず更新が止まる、といったことが起こりがちです。動画マーケティングの予算は、1本の制作費ではなく、年間の配分で考えるほうが、途中で止まりにくくなります。

この記事では、マーケティングの責任者や経営者の方に向けて、制作・広告配信・運用の3つの費目の考え方、予算を決める順番、初年度と2年目の違い、予算が少ないときの優先順位を整理します。後半では、予算を決める場面でよく出る質問も取り上げました。


この記事でわかること

  1. 年間予算を3つの費目で考える方法 — 制作、広告配信、運用
  2. 予算を決める順番 — 目的、本数、配信、運用
  3. 初年度と2年目の違い — 何に厚く配分するか
  4. 予算が少ないときの優先順位
  5. 予算を決める場面でよく出る質問と答え

1本の制作費と、年間の予算を分けて考える

最初に、この記事で扱う範囲を整理しておきます。

1本の動画にいくらかかるかは、企画、撮影、編集などの工程と、撮影日数や出演者の数で決まります。見積書の項目の見方は動画制作の見積もりの読み方で、導入事例動画の価格帯ごとにできることは導入事例動画の制作費用・相場で詳しく扱いました。

参考までに、アルファノート(ムビサク)が2026年6月に実施した調査(動画マーケティングを実施しているBtoB企業の担当者500名が対象)では、動画制作の予算を1本あたりで聞いたところ、次のような回答でした。

1本あたりの予算回答の割合
10万円未満28.4%
10万円から30万円未満16.4%
30万円から50万円未満23.0%
50万円から100万円未満18.8%
100万円から300万円未満8.0%
300万円以上5.4%
1本あたりの予算 — 10万円未満回答の割合28.4%
1本あたりの予算 — 10万円から30万円未満回答の割合16.4%
1本あたりの予算 — 30万円から50万円未満回答の割合23.0%
1本あたりの予算 — 50万円から100万円未満回答の割合18.8%
1本あたりの予算 — 100万円から300万円未満回答の割合8.0%
1本あたりの予算 — 300万円以上回答の割合5.4%

最も多いのは10万円未満ですが、30万円以上と答えた企業も合わせて半数を超えています。1本の予算は、作る動画の種類や使い方によって大きく変わるということでしょう。

この記事では、1本ごとの金額の話には踏み込みません。扱うのは、その1本を何本作り、どう届け、誰が運用するかを1年分まとめて考える方法です。


年間予算の3つの費目 — 制作、広告配信、運用

動画マーケティングの年間予算は、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

費目中身決まり方
制作企画、撮影、編集、ナレーション作る本数と種類
広告配信YouTubeやSNS、Web広告の配信費届けたい人の数と期間
運用社内の担当者の時間、外注の運用費更新の頻度と体制
費目 — 制作中身企画、撮影、編集、ナレーション決まり方作る本数と種類
費目 — 広告配信中身YouTubeやSNS、Web広告の配信費決まり方届けたい人の数と期間
費目 — 運用中身社内の担当者の時間、外注の運用費決まり方更新の頻度と体制
動画マーケティングの年間予算を、制作、広告配信、運用の3つの費目に分けて示した図
動画マーケティングの年間予算を、制作、広告配信、運用の3つの費目に分けて示した図

制作 — 作る本数と種類で決まる

制作費は、外注する場合は見積もりの合計、社内で作る場合は機材や編集ソフトの費用と、作る人の時間です。年間で考えるときは、1本ごとの金額より、何本作るか、新しく撮影するのか既存の素材から作るのかで大きく変わります。

広告配信 — 届けたい人の数と期間で決まる

作った動画を広告で届ける費用です。自社サイトや商談で見てもらうだけなら、この費目はかかりません。一方で、新しい見込み客に届けたい場合は、制作費とは別に配信の予算が必要になります。

運用 — 見落とされやすい費目

運用には、公開や更新の作業、効果の確認、SNSへの投稿、社内での撮影の調整などが含まれます。外注していれば運用費として見えますが、社内で回している場合は担当者の時間として隠れてしまいがちです。

運用の時間を予算として書き出しておくと、担当者の負担が見え、続けられる本数の判断がしやすくなります。


予算を決める順番 — 目的、本数、配信、運用

年間予算は、金額の枠から決めるより、次の順番で積み上げるほうが説明しやすくなります。

目的、必要な本数、配信、運用の順に年間予算を積み上げる4つのステップを示した図
目的、必要な本数、配信、運用の順に年間予算を積み上げる4つのステップを示した図
  1. 目的を決める — 動画で何を増やしたいかを1つか2つに絞りましょう。資料請求を増やしたいのか、商談を短くしたいのか、採用の応募を増やしたいのかで、作る動画も届け方も変わります
  2. 必要な本数を決める — 目的に対して、購買のどの段階に何本の動画が必要かを数えてみてください。種類ごとの使い分けはBtoBで使う動画の種類と選び方にまとめています
  3. 配信の方法を決める — 自社サイト、メール、商談で見てもらうのか、広告で新しい人に届けるのかを決めます。広告を使うなら、期間と対象を決めたうえで配信費を見積もる流れです
  4. 運用の体制を決める — 誰が更新し、誰が効果を確かめるかを決めます。社内の担当者の時間で足りなければ、外注の運用費を加えましょう

この順番で積むと、「なぜこの金額なのか」を目的から説明できるようになるはずです。予算を通す場面で、金額の根拠を聞かれたときにも答えやすくなるでしょう。目的の決め方そのものは、BtoBの動画マーケティングの進め方で詳しく解説しています。


広告配信の予算を考えるときの市場の動き

電通の「2025年 日本の広告費」によると、2025年のインターネット広告費は4兆459億円(前年比110.8%)で、総広告費に占める割合は50.2%と初めて過半数に達しました。同じ発表では、SNS上の縦型動画広告やコネクテッドTVなど、動画広告の需要の高まりが市場の拡大に寄与したとされています。

CARTA HOLDINGS、電通、電通デジタル、セプテーニの4社による詳細分析では、ビデオ(動画)広告費は1兆275億円(前年比121.8%)で、推定開始以降はじめて1兆円を超えました。2026年も前年比114.7%の1兆1,783億円になると予測されています。

これらは主にBtoCを含む広告市場全体の数字です。BtoBの予算にそのまま当てはめることはできませんが、動画広告を出す企業が増えている、ということは読み取れます。広告で届けることを前提にするなら、制作費だけでなく配信費を最初から計画に入れておくことが欠かせません。


初年度と2年目で配分を変える

動画マーケティングの予算は、1年目と2年目で使い道が変わります。同じ配分を続けるより、段階に合わせて見直すほうが無駄が出にくくなります。

初年度 — 柱になる動画と、測る仕組みに配分する

初年度は、まだ手元に動画の素材がありません。長く使える柱の動画、たとえばサービス紹介や導入事例の動画に制作費を厚めに配分することが多くなります。

あわせて、効果を測る仕組みを整えることも初年度の仕事です。どの指標を見れば成果と判断するかは、動画マーケティングの効果測定を参考にしてください。

広告配信は、最初から大きく出すより、目的に合うかを確かめる規模から始めると判断しやすくなります。

判断の時期を先に決めておく

アカシアが実施した「YouTube運用の撤退・失敗に関する実態調査」(2026年2月、YouTubeを運用中または運用した経験がある企業の担当者303名が対象)では、62.7%がYouTube運用の撤退・中止を経験していました。運用開始から失敗と判断するまでの期間は「3〜6か月未満」が39.2%で最も多く、「3か月未満」と合わせると53.2%が半年以内に判断していたと報告されています。

短い期間で判断すると、成果が出る前に予算を止めてしまうおそれがあります。初年度の予算を決めるときは、いつ、どの数字で続けるかを判断するかを一緒に決めておくとよいでしょう。YouTubeを続けるための設計はBtoB企業のYouTube運用で扱っています。

2年目 — 素材の展開と更新に配分を移す

2年目は、1年目に撮影した素材があります。新しく撮る本数を絞り、既存の素材から短い動画や別の用途の動画を作る、古くなった情報を更新する、といった使い道に予算を移すことができます。

1年目の結果から、効果が見えた配信先に広告費を寄せることも2年目の判断です。運用の手順が決まってくれば、社内で回せる部分も見えてきます。

もう1つ、2年目から増えやすいのが更新の費用です。製品の機能や料金、担当者の異動など、動画の中の情報は少しずつ古くなります。最初から章ごとに分けて作っておくと、変わった章だけを作り直せるため、更新の費用を抑えやすくなります。章の分け方は、BtoBの営業動画の作り方で紹介しました。



予算が少ないときの優先順位

予算が限られている場合は、すべての費目を薄く配分するより、優先順位をつけて集中させるほうが効果を確かめやすくなります。

  1. 比較・検討の段階で見られる動画を1本作る — サービス紹介や導入事例のように、自社サイト、商談、メールと使い道が多い動画から始めるのがおすすめです
  2. 配信は自社の接点から始める — 広告費をかける前に、自社サイトのサービスページ、商談前のメール、展示会など、すでにある接点で見てもらいます
  3. 既存の素材を活かす — ウェビナーの録画や、過去に撮影した素材から作れる動画がないか確かめてみましょう。録画の使い方はウェビナー動画の二次活用でまとめています
  4. 数を出す動画は社内で作る — SNS向けの短い動画のように本数が必要なものは、社内で作れる範囲から始めます。内製と外注の分け方はSNS動画は内製か外注かを参考にしてください

撮影した素材には、本編以外の使い道もあるものです。1回の撮影から複数の動画を作る方法は、インタビュー動画の納品後の二次活用で紹介しています。


社内で予算を通すときにまとめておくこと

予算の申請では、金額より先に、何のために使うのかが問われます。次の項目を1枚にまとめておくと、判断する人が検討しやすくなります。

  • 目的と見る人 — 何を増やすための動画か、誰に見てもらうか
  • 本数と種類 — 購買のどの段階に、何本の動画を置くか
  • 3つの費目の内訳 — 制作、広告配信、運用それぞれの金額と、運用にかかる社内の時間
  • 測る指標 — 何の数字で成果を確かめるか
  • 判断の時期 — いつ、どの数字で続けるか見直すかを判断するか

1本の金額だけを並べると、制作会社の見積もりの比較で議論が終わってしまいがちです。年間の配分と判断の時期まで書いておけば、動画を作ったあとにどう使うかまで含めて話し合えます。


よくある質問

Q1. 動画マーケティングの予算は、売上やマーケティング予算の何%が目安ですか?

公的な統計などで確認できる、決まった目安はありません。業種や目的、すでにある素材によって必要な金額は大きく変わります。比率から決めるより、目的、本数、配信、運用の順に積み上げ、その合計が全体の予算の中で妥当かを確かめるほうが説明しやすいでしょう。

Q2. 最初の1本には、どのくらいの予算をかければよいですか?

作る動画の種類と使い方によって変わります。先に紹介したアルファノート(ムビサク)の調査でも、1本あたりの予算は10万円未満から300万円以上まで分かれていました。会社の顔になる動画や導入事例のように長く使う動画は、使う場面の多さに見合う予算をかける、という考え方が一般的です。金額の考え方は動画制作の見積もりの読み方を参考にしてください。

Q3. 制作費と広告費は、どちらに多く配分すべきですか?

動画をどこで見てもらうかによります。自社サイトや商談で見てもらう動画なら、広告費をかけずに制作に集中できます。新しい見込み客に届けたい場合は、配信費がないと動画が見られないため、制作費だけで予算を使い切らないよう注意が必要です。

Q4. 社内で作れば、予算はかからないのではありませんか?

外部への支払いは減りますが、担当者の時間がかかります。撮影や編集に慣れるまでの時間も含めると、思った以上に負担が大きくなることがあります。運用の費目として担当者の時間を書き出し、外注した場合と比べて判断するのがおすすめです。

Q5. 年度の途中で予算を見直すのは、いつがよいですか?

予算を決めるときに、判断の時期を先に決めておくのが基本です。公開してすぐは数字が安定しないため、最初に決めた指標がある程度たまる時期を見直しの目安にします。広告配信は短い期間でも結果が見えやすいので、制作や運用より早めに見直すこともできます。


まとめ

主要ポイント

  1. 予算は年間の配分で考える — 1本の制作費とは分けて考える
  2. 費目は制作、広告配信、運用の3つ — 運用の社内の時間も予算として書き出す
  3. 決める順番は目的、本数、配信、運用 — 金額の根拠を目的から説明できる
  4. 初年度は柱の動画と測る仕組み、2年目は展開と更新 — 判断の時期も先に決める
  5. 予算が少ないときは集中させる — 使い道の多い1本と、自社の接点から始める

次のステップ

  • 今ある動画と、来年度に必要な動画を購買の段階ごとに並べてみる
  • 制作、広告配信、運用の3つの費目で、今年かかった費用と社内の時間を書き出す
  • 来年度の予算に、続けるかを判断する時期と指標を書き添える

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参考ソース

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