SNS用の動画を社内で作るか、制作会社や運用代行に頼むか。この判断を「全部を社内でやるか、全部を外に出すか」の二択で考えると、どちらを選んでもどこかに無理が出やすくなります。
SNS動画の制作は、企画、撮影、編集、投稿、分析という性質の違う工程の集まりです。工程ごとに、社内に残すものと外に出すものを分けると、予算と人手に合わせた体制を組みやすくなるでしょう。
この記事では、SNS動画の担当者やマーケティングの責任者に向けて、工程ごとの分け方、人数別の体制の例、外注するときの依頼範囲と引き継ぎ、内製に切り替える順番を整理しました。動画マーケティング全体の進め方は、BtoBの動画マーケティングの進め方にまとめています。
この記事でわかること
- 内製と外注の現状 — 調査に見る制作体制の分かれ方
- 工程ごとの分け方 — 企画、撮影、編集、投稿、分析で何を社内に残すか
- 体制の例 — 1人担当、2〜3人のチーム、外注との併用
- 外注するときの依頼範囲と引き継ぎ
- 内製に切り替える順番と、つまずきやすい点
内製か外注かは、工程ごとに決める
株式会社Lumiiが2025年1月に実施した「BtoB企業の営業・マーケティングにおける動画活用の実態調査」(BtoB企業で動画を活用している営業・マーケティング担当者402名が対象)では、動画制作の体制は次のように分かれていました。
| 動画制作の体制 | 割合 |
|---|---|
| 全て自社で行なっている | 24.6% |
| 一部外部に依頼している | 25.4% |
| 全て外部に依頼している | 12.9% |
| わからない | 37.1% |
SNSに限らない動画制作全体の数字ですが、「一部外部に依頼している」が最も多く、全部を自社で行う企業とほぼ同じ割合でした。
株式会社アカシアが2026年2月に実施した「YouTube運用の撤退・失敗に関する実態調査」(YouTubeを自社で運用中、または運用した経験がある企業の担当者303名が対象)でも、運用体制は「すべて自社運用」が57.1%、「すべて外注」が23.4%、「一部外注」が19.5%に分かれています。
どちらの調査でも、全部を社内でやる企業と全部を外に任せる企業のあいだに、一部だけを外に出す企業が一定の割合でいます。考えるべきなのは、外注するかどうかより、どの工程を外に出すかのほうです。
判断の軸は次の3つです。
- 自社の知識が必要か — 顧客、商材、業界の事情を知らないとできない作業か
- 専門の技術や機材が必要か — 撮影の画角や音声、編集の技術など、経験の差が出やすい作業か
- 頻度が高いか — 毎週発生する作業か、月1回や四半期に1回の作業か
自社の知識が必要で頻度の高い作業は社内に、専門の技術が必要で頻度の低い作業は外に、と分けるのが基本の考え方になります。
SNS動画の5つの工程と、社内に残すもの・外に出すもの
5つの工程を、社内に残すものと外に出せるものに分けると、次のようになります。
| 工程 | 社内に残すもの | 外に出せるもの |
|---|---|---|
| 企画 | テーマと目的の決定 | 構成案、台本の整え方 |
| 撮影 | 出演者の調整、内容の確認 | 長尺の撮影、照明と音声 |
| 編集 | 使う場面の選定、最終確認 | カット、テロップ、書き出し |
| 投稿 | 投稿の判断、コメントへの返信 | 予約投稿、説明文の下書き |
| 分析 | 数字を見て次を決める判断 | 数値の集計、レポート作成 |

企画 — テーマを決める役割は社内に残す
企画は、もっとも外に出しにくい工程です。どのテーマが顧客に響くか、営業の現場でどんな質問が多いかを知っているのは、社内の担当者だからです。
一方で、決めたテーマを動画の構成や台本に落とし込む作業は、外の力を借りやすい部分でもあります。テーマと伝えたい内容は社内で決め、見せ方は制作側と相談する、という分担が現実的でしょう。台本の書き方は企業動画の台本の書き方で解説しています。
撮影 — 長尺の撮影は外、日常の撮影は社内
撮影は、内容によって分け方が変わります。インタビューや会社紹介のように、画角や音声の質がそのまま多くの動画に影響する長尺の撮影は、外部に任せる候補になります。
社内の様子、短い告知、イベントの記録のように、頻度が高く、その場で撮ることに価値がある撮影は、社内の担当者がスマートフォンで撮るほうが続けやすいはずです。出演者の調整と撮影内容の確認は、どちらの場合も社内の役割として残ります。
編集 — 最初に外へ出しやすい工程
編集は、作業時間が長く、技術の差が出やすい工程です。人手が足りないとき、最初に外へ出す候補になります。
ただし、どの場面を使うかの判断は、事業や顧客を知っている社内の担当者のほうが向いています。担当者が使いたい場面に印をつけて渡し、カット、テロップ、書き出しを外部の編集者が担う分担にすると、修正の往復が減るでしょう。
投稿 — 判断と返信は社内に
投稿の作業そのものは、予約投稿の機能を使えば誰でもできます。外に出すかどうかで考えたいのは、投稿してよいかの判断と、コメントへの返信のほうです。
コメントやメッセージへの返信は、会社として答える内容になります。返信まで外部に任せると、事実と違う回答や温度感のずれが起きることがあるため、社内に残しておくのが無難でしょう。
分析 — 集計は外、判断は社内
再生数や視聴維持率の集計、月次レポートの作成は、外部に任せることもできます。とはいえ、その数字を見て次に何を変えるかを決めるのは、目的を決めた社内の担当者の役割です。
何を指標にするかは、公開前に決めておきます。指標の決め方は動画マーケティングの効果測定にまとめました。
人数別の体制の例 — 1人担当、2〜3人、外注併用
同じ分け方でも、社内の人数によって外に出す範囲は変わります。よくある3つの体制を例に整理します。

1人で担当する場合
SNS担当が1人で、ほかの業務と兼務しているケースです。全部を1人で抱えると、本業が忙しい時期に投稿が止まりやすくなります。
- 社内でやること — 企画、使う場面の選定、投稿、返信、月1回の振り返り
- 外に出すこと — 長尺の撮影、編集
投稿の頻度は、週1〜2本から始めるのが目安です。長尺の撮影を月1回にまとめ、その素材から複数本を切り出すと、撮影の手間を抑えられます。ただし、切り出しただけでは再生されにくいため、切り口と冒頭の一言を企画で決めておくことが大切です。詳しくはBtoB企業のショート動画活用で扱っています。
2〜3人のチームの場合
- 企画と判断の担当 — テーマの決定、公開前の確認、分析の判断
- 撮影と編集の担当 — 日常の撮影、短い動画の編集
- 投稿と返信の担当 — 投稿、コメントへの返信、数値の記録
この人数なら、短い動画の編集までは社内で回せる可能性があります。外部には、長尺の撮影や、会社紹介のように品質を求める動画だけを頼む形が考えられます。
外注と併用する場合
企画から投稿までを運用代行に任せ、社内は判断と確認を担う形です。立ち上げの時期で、社内に動画の経験者がいない場合に向いています。
この形でも、テーマの最終決定と公開前の確認は社内に残しておきましょう。すべてを任せきりにすると、契約が終わったときに社内に何も残らない、ということになりかねません。
YouTubeのチャンネルを運用する場合の体制は、BtoB企業のYouTube運用でも整理しています。
外注するときの依頼範囲と引き継ぎ
依頼範囲を工程で書く
「SNS動画をお願いしたい」とだけ伝えると、見積もりの範囲が会社ごとにばらばらになり、比べられません。依頼するときは、工程ごとに、どこからどこまでを頼むかを書き出しておきます。
- 企画 — テーマの提案から頼むか、構成案だけを頼むか
- 撮影 — 撮影の回数、場所、出演者の人数
- 編集 — 本数、1本の長さ、テロップの有無、縦型か横型か
- 修正 — 何回までが料金に含まれるか
- 投稿と分析 — 投稿の作業やレポートまで含めるか
見積もりの内訳の見方は動画制作の見積もりの読み方で、納期を短くする工夫は動画制作の納期を短縮するポイントで解説しています。
素材とデータを社内に残す
外注するときに見落としやすいのが、撮影した素材や編集データの扱いです。将来、内製に切り替えたり、別の会社に頼んだりするとき、元の素材がないと作り直しになってしまいます。
- 撮影した元の素材を納品してもらうか
- 編集のプロジェクトファイルやテロップのデザインを受け取れるか
- SNSアカウントの管理権限を誰が持つか
- 納品物の著作権と、出演者の肖像の扱いをどう決めるか
権利の扱いは、契約の段階で決めておくのが安全です。社員が出演する場合の注意点は社員が出演する動画の肖像権と著作権にまとめています。
引き継ぎの資料を作っておく
外部に任せていた工程を社内に戻すとき、または外注先を変えるときに備えて、次のような資料を残しておくと引き継ぎが早くなります。
- 投稿の目的と、見ている指標
- テロップの書体や色、サムネイルの型などの決まりごと
- これまでの投稿の一覧と、反応がよかった回
- 確認の流れと、確認する人
こうした資料の作成を、はじめから依頼範囲に入れておくのも1つの方法です。
内製に切り替える順番
外注から内製に移すときは、一度に全部を切り替えるより、工程ごとに順番に移すほうが品質を保ちやすくなります。目安の順番は次のとおりです。
- 投稿と分析 — 作業の負担が小さく、社内に残す価値が高い
- 企画 — 外注先の構成案を見ながら、社内で考える割合を増やす
- 短い動画の編集 — テロップの型を決め、長尺から切り出す編集から始める
- 日常の撮影 — スマートフォンで撮れる範囲から社内で撮る
- 長尺の撮影 — 必要に応じて外部に残してもよい

最後の長尺の撮影は、無理に内製にしなくてもかまいません。機材や照明、音声の経験が必要なうえ、頻度も月1回程度だからです。内製化のゴールは全工程を社内でやることではなく、判断と運用の力が社内に残っている状態と考えておくと、無理のない計画になるはずです。
切り替えの時期は、外注先との契約の更新に合わせると進めやすくなります。更新の数か月前から1つの工程ずつ社内に移し、外注先に確認してもらいながら慣れていく方法もあります。
内製化でつまずきやすい点
投稿が続かない
アカシアの調査で、YouTube運用を撤退・中止した190名に理由を聞いた結果(複数回答)では、「継続投稿が困難であった」が37.9%ありました。回答者全体が経験した課題としても、「動画制作・編集に予想以上に手間がかかった」が20.8%、「定期的な更新を維持するのが困難だった」が18.2%挙がっています。
内製に切り替えた直後は、作業時間の見積もりが甘くなりがちです。最初の3か月は投稿の本数を控えめにし、1本にかかる時間を記録してから本数を増やすと、途中で止まりにくくなります。
担当者の異動で止まる
1人の担当者に知識が集まると、異動や退職のときに運用が止まってしまいます。前の章で挙げた引き継ぎの資料は、外注先とのあいだだけでなく、社内の担当者どうしでも役に立つでしょう。
品質がばらつく
社内の複数の人が編集するようになると、テロップの書体や色、動画の長さが回ごとに変わりがちです。テロップの型と、冒頭と終わりの構成を決めておくと、誰が編集しても見た目がそろいます。画面の向きの決め方は動画の縦横比の選び方を参考にしてください。
改善を社内だけで抱え込む
アカシアの調査では、失敗を経験した265名が試みた改善策(複数回答)として「動画の品質向上に投資した」が35.5%で最も多く、「外注・コンサルティングを導入した」は18.9%でした。一方で、経験した失敗や課題として動画の品質の低さを挙げた人は12.5%にとどまっています。
うまくいかない原因が企画やテーマにあるなら、機材や編集に投資しても解決しにくいかもしれません。内製で行き詰まったときは、企画の部分だけを外部に相談するという選択肢も残しておきましょう。
よくある質問
Q1. 最初から全部を内製にするのは難しいですか?
社内に動画の経験者がいない場合は、負担が大きくなりやすいと考えられます。まずは企画と投稿を社内で担い、撮影と編集を外部に頼むところから始め、慣れた工程から社内に移していく方法がおすすめです。
Q2. 編集だけを外注することはできますか?
できます。社内で撮影した素材やウェビナーの録画を渡して、カットやテロップを頼む依頼は一般的です。使いたい場面を指定して渡すと、修正の往復が減ります。
Q3. 運用代行と制作会社は、どう使い分ければよいですか?
運用代行は企画から投稿、分析までを継続して担うことが多く、制作会社は撮影や編集など動画を作る工程を担うことが多いでしょう。社内に判断する人がいて作る手が足りないなら制作会社、運用の経験そのものが足りないなら運用代行、という分け方が目安になります。
まとめ
主要ポイント
- 内製と外注は工程ごとに決める — 二択で考えると無理が出やすい
- 社内に残すのは判断 — テーマの決定、使う場面の選定、投稿の判断、返信、分析の判断
- 外に出しやすいのは技術と手間のかかる作業 — 長尺の撮影と編集
- 外注するときは素材とデータを残す — 元の素材、編集データ、アカウントの権限
- 内製は投稿と分析から順に移す — 長尺の撮影は外に残してもよい
次のステップ
- 今のSNS動画の作業を、企画、撮影、編集、投稿、分析に分けて書き出す
- それぞれの工程を、誰が、月に何時間担っているかを記録する
- 社内に残す工程と外に出す工程を決め、依頼範囲を工程ごとに書く
SNS動画の体制づくりや内製化の進め方については、デジタルメディア戦略事業でもご相談を承っています。
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参考ソース
- BtoB企業の営業・マーケティングにおける動画活用の実態調査(株式会社Lumii、2025年2月4日) — 動画制作の体制(全て自社、一部外部、全て外部)
- BtoB企業の動画活用の実態調査 詳細(株式会社Lumii) — 上記調査の引用元として指定されたページ
- 企業のYouTube運用、62.7%が撤退・中止を経験(株式会社アカシア、2026年3月30日) — 運用体制、撤退の理由、経験した課題、失敗後の改善策
- 株式会社アカシア — 上記調査の実施元