「うちもTikTokをやったほうがいいのでは」という声が、社内から上がることがあります。若手の社員から、経営層から、あるいは採用の担当者から。BtoB企業でもTikTokの企業アカウントを見かけるようになり、気になっている担当者は多いのではないでしょうか。
一方で、BtoB企業がTikTokに取り組むべきかを、判断の基準から整理した日本語の解説はあまり見当たりません。海外の記事はあっても、利用者の年齢層や使われ方は国によって違うため、そのまま当てはめるのは難しいでしょう。
結論から言うと、BtoB企業のTikTokは、採用目的か、顧客向けかで判断が分かれます。この記事では、総務省の調査で年代別の利用率を確かめたうえで、YouTubeショートやInstagramのリールと比べながら、目的ごとの判断の基準を整理していきます。
この記事でわかること
- 判断の前提 — 先に目的を採用と顧客向けに分ける理由
- 年代別の利用率 — 総務省の調査で見るYouTube、Instagram、TikTok
- 採用目的の場合 — TikTokが候補に入る条件
- 顧客向けの場合 — 慎重に考えたい理由と、例外になる場合
- YouTubeショート、リールとの比較 — 目的ごとの選び方
- 始める前の確認と、試し方 — 音源、出演者、判断の時期
最初に、目的を採用と顧客向けに分ける
TikTokをやるべきかという問いには、そのままでは答えにくいものです。誰に何を届けたいかによって、答えが変わるからです。BtoB企業がSNSで動画を出す目的は、大きく次の2つに分かれます。
- 採用 — 学生や若手の求職者に、職場の雰囲気や社員の人柄を知ってもらう
- 顧客向け — 取引先になりうる企業の担当者や決裁者に、社名や専門性を知ってもらう
採用の相手は個人で、年齢層もある程度しぼれるはずです。顧客向けの相手は企業の中の人で、担当者から決裁者まで年齢に幅があります。同じTikTokでも、相手が違えば向き不向きも変わるため、目的を分けずに議論すると、賛成と反対がかみ合いません。
社内で提案されたときに聞いておきたい4つのこと
TikTokをやろうという提案が社内から出たら、賛成か反対かを決める前に、次の4つを提案した人と一緒に確かめてみてください。
- 誰に届けたいか — 学生か、若手の求職者か、取引先の担当者か
- 見たあとに何をしてほしいか — 採用サイトを見てほしいのか、社名を覚えてほしいのか
- 誰が出演し、誰が投稿を続けるか — 特定の社員1人に頼ると、異動や退職で止まりやすい
- いつ、何を見て判断するか — 試す期間と、続けるかを決める基準
この4つに答えられれば、TikTokが合うかどうかは、ほとんど決まってきます。答えられない項目があるなら、媒体を選ぶより先に、目的を詰める段階だと考えたほうがよいでしょう。
SNS動画の目的の置き方は、BtoBの動画マーケティングの進め方でも全体像を整理しています。
年代別の利用率をYouTube、Instagramと比べる
判断の材料として、公的な調査で利用者の年齢層を確かめておきましょう。総務省情報通信政策研究所の「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」は、13歳から79歳の男女1,800人を対象に、2025年12月に実施されたものです。主なサービスの利用率は、全年代でYouTubeが81.5%、Instagramが54.8%、TikTokが36.7%でした。
年代別に見ると、次のようになります。
| 年代 | YouTube | TikTok | |
|---|---|---|---|
| 10代 | 95.0% | 69.3% | 67.9% |
| 20代 | 96.3% | 82.6% | 61.5% |
| 30代 | 94.0% | 76.6% | 44.7% |
| 40代 | 91.6% | 67.1% | 42.6% |
| 50代 | 84.9% | 54.4% | 32.2% |
| 60代 | 72.6% | 36.1% | 21.2% |

報告書では、TikTokの利用率は増加しており、10代で67.9%と最も高いと説明されています。性別では女性が41.7%、男性が31.8%でした。
この表から読み取れるのは、次の3点です。
- TikTokは10代と20代で利用率が高い — 10代と20代では6割を超えている
- 30代以降は4割前後から下がっていく — 40代で42.6%、50代で32.2%
- どの年代でもYouTubeが最も高い — 50代でも84.9%
この調査の利用率は、そのサービスを利用しているかどうかを聞いたもので、仕事の情報を集めるために使っているかまでは分かりません。それでも、届けたい相手の年代でどれだけの人が使っているかは、媒体を選ぶ最初の目安になります。
採用目的なら、TikTokは候補に入る
新卒や若手の採用が目的なら、TikTokは検討する価値があります。調査でも、新卒の採用で主な相手になる10代後半から20代の利用率は高く、YouTube、Instagramに次ぐ水準でした。
TikTokが合いやすい採用の発信
TikTokに向いているのは、短い動画で伝わる内容です。
- 社員の人柄 — 若手社員が仕事の面白さや入社の決め手を話す
- 職場の様子 — オフィス、工場、現場の1日を短く見せる
- 仕事の中身 — 専門的な作業を、知らない人にも分かるように見せる
BtoB企業は、仕事の中身が外から見えにくいものです。求職者にとっては、どんな人が、どんな場所で働いているかが分かるだけでも、応募を考える材料になるでしょう。
TikTokではなくYouTubeで公開されている例ですが、明電舎の公式チャンネルで公開している、グループ会社の明電ファシリティサービスの採用向け企業紹介ショート動画を紹介します。日々の仕事を1分ほどの短い動画にまとめています。
出典 明電ファシリティサービス 《採用》 企業紹介ショート動画(明電舎公式チャンネル(MEIDEN Channel)、YouTube)
続けるための撮影の組み方
採用向けの短い動画は、週に何本も撮影しようとすると、出演する社員の負担が大きくなります。月に1回、半日ほどの撮影日を決め、複数の社員に少しずつ出てもらい、まとめて何本分かを撮っておく組み方なら、本業への影響を抑えられます。
出演者を1人に固定しないことも大切です。部署や年次の違う社員が交代で出ると、見る人は職場の幅を感じ取れますし、誰かが異動しても投稿が止まりません。
採用でもTikTokだけに頼らない
TikTokで興味を持った人が、次に何を見るかまで用意しておく必要があります。採用サイトや、会社説明会の動画、社員インタビューなど、もう少し詳しく知れる場所への導線を決めておきましょう。採用ブランディングと求人の役割の分け方は採用ブランディングと求人広告の役割分担で、若い世代に向けた動画の構成は新卒採用向け動画の作り方で扱っています。
中途採用が中心なら、話は少し変わります。30代と40代のTikTokの利用率は4割台で、同じ年代のYouTubeは9割を超えていました。30〜40代に向けた発信は、YouTubeを軸に考えるほうが届けやすいはずです。年代に合わせた伝え方は、中途採用向け動画の作り方にまとめました。
顧客向けなら、相手がいるかを先に確かめる
顧客向けの発信にTikTokを使うかどうかは、慎重に考えたいところです。
決裁者の世代では、YouTubeとの差が大きい
BtoBの購買では、担当者だけでなく、課長や部長、役員など複数の人が関わります。決裁に関わる人が多い40代と50代では、TikTokの利用率が42.6%と32.2%で、YouTubeの91.6%と84.9%との差が大きくなっていました。
さらに、BtoBの商材は検討の期間が長く、比べる情報も多くなります。短い動画で関心を持ってもらったあと、詳しい説明を見てもらう場所が必要です。YouTubeなら、ショートと長尺の動画を同じチャンネルで運用できます。YouTubeヘルプによると、ショートに関連動画を設定して、自分の長尺動画などへ誘導することもできます(上級者向け機能へのアクセスが必要)。
TikTokが顧客向けにも候補になる場合
ただし、次のような場合は、顧客向けでもTikTokを試す価値があります。
- 顧客企業の担当者が若い — 発注の窓口になる担当者が20代中心の取引先が多い場合
- 最終的な利用者が一般の消費者 — 部品や素材、業務用のサービスでも、消費者に知られることが取引先への説得材料になる場合
- 作業そのものが見て面白い — 加工、施工、修理など、手元の作業や仕上がりの変化が映像で伝わる仕事
どの場合も、思い込みで決めず、営業担当者や既存の顧客に、普段どのSNSを見ているかを聞いてみるのが確実です。
YouTubeショート、リールとの比較
TikTok、YouTubeショート、Instagramのリールは、どれも縦型の短い動画を流す仕組みです。判断の観点ごとに比べると、次のようになります。
| 観点 | YouTubeショート | Instagramのリール | TikTok |
|---|---|---|---|
| 利用率が高い年代 | 10代から50代 | 10代から30代 | 10代と20代 |
| 長尺へのつなぎ | 同じチャンネルの長尺へ誘導できる | 長尺は別の媒体へ | 長尺は別の媒体へ |
| 向く目的 | 顧客向け、採用 | 採用、会社の雰囲気 | 採用、若い層への認知 |
| 1つ目に選ぶなら | 顧客向けの最初の候補 | 採用の候補 | 若手採用の候補 |
利用率が高い年代は、前の章で見た総務省の調査をもとにしています。調査はYouTube、Instagram、TikTokというサービス全体の利用率で、ショートやリールに限った数字ではない点に注意してください。Instagramは20代で82.6%、30代で76.6%と、若い層に加えて30代でも高い利用率でした。20代後半から30代の若手の中途採用まで視野に入れるなら、TikTokよりリールのほうが届く範囲は広いと考えられます。

BtoB企業がSNSの動画を1つ目に始めるなら、顧客向けにはYouTubeショート、若手の採用にはTikTokかリール、という分け方が判断しやすいと私たちは考えます。3つを同時に始めるより、1つで投稿を続けられる体制を作ってから広げるほうが、途中で止まりにくいはずです。YouTubeを軸にする考え方は、動画マーケティングはYouTubeを軸にとBtoB企業のYouTube運用で詳しく紹介しています。
企業アカウントで始める前に確かめること
TikTokに取り組むと決めたら、投稿を始める前に次の点を確かめておきましょう。
使える音源
TikTokのビジネスヘルプセンターによると、一般の音楽ライブラリは商用利用ができません。企業の投稿や動画広告などの商業的な活動には、商用利用が許可された楽曲を集めた商用音楽ライブラリ(約100万曲)を使う必要があります。他のユーザーのオリジナル楽曲などを使う場合は、自社の法務部門と相談して、適切な許可を得ているか確認するよう、注意書きも添えられていました。
TikTokでは、流行している音源に合わせた投稿がよく見られます。企業のアカウントでは同じ音源が使えない場合があることを、企画の段階で知っておくと安心です。
出演する社員の同意
採用向けの発信では、社員が出演することが多くなります。出演をお願いする前に、どこに公開するか、退職したあとに動画をどう扱うかを本人に伝え、同意を得ておきましょう。詳しくは社員が出演する動画の肖像権と著作権で解説しています。
確認の流れとコメントへの対応
投稿前に誰が確認するか、コメントに誰がどう返すかも決めておきます。公開した動画には、想定していなかった反応が集まることもあります。答えにくいコメントへの対応方針を、始める前に関係者で共有しておくと慌てずに済むでしょう。
企画、撮影、編集、投稿のどこを社内で担い、どこを外に任せるかは、SNS動画は内製か外注かにまとめています。
試す期間と、続けるかの判断の基準
TikTokを始めるかどうか迷う場合は、期間を決めて試す方法があります。始める前に、何を見て判断するかを決めておきましょう。
- 目的と相手を1つに絞る — 「新卒採用で、理系の学生に職場を知ってもらう」のように書き出す
- 3か月の試行期間を決める — 投稿の本数と、出演する社員を先に決めておく
- 見る指標を決める — 採用なら、プロフィールから採用サイトへのアクセスや、応募時に「TikTokを見た」と答えた人の数
- 期間が終わったら判断する — 続ける、投稿の型を変える、やめるのどれかを選ぶ
再生回数だけで判断すると、目的とのつながりが見えなくなります。動画の指標と応募や商談のつなぎ方は、動画マーケティングの効果測定で詳しく扱っています。
再生される企画の立て方や、冒頭の数秒の作り方は、媒体が変わっても考え方は共通です。この記事では扱わず、BtoB企業のショート動画活用にまとめたので、あわせて参考にしてください。
よくある質問
Q1. YouTubeショートやリール用に作った動画を、TikTokにも投稿してよいですか?
縦型の同じ動画を複数の媒体に出すことはできます。ただし、TikTokの企業アカウントでは使える音源が限られるため、他の媒体で使った音楽がTikTokでは使えない場合があります。音源の条件を確かめてから投稿しましょう。横型の動画を縦型にする場合の考え方は、動画の縦横比の選び方を参考にしてください。
Q2. 社員が個人のアカウントで発信するのは、企業アカウントとどう違いますか?
社員の個人アカウントは、その人の考えや人柄が伝わりやすい反面、会社としての確認が届きにくくなります。会社の名前を出して発信する場合は、出してよい情報の範囲や、困ったときの相談先をあらかじめ決めておくのがおすすめです。
Q3. BtoB企業がTikTokをやらないと、採用で不利になりますか?
TikTokをやらないこと自体で不利になるとは限りません。若い求職者に届ける手段は、採用サイト、Instagram、YouTubeなど他にもあります。大切なのは、届けたい相手が見ている場所に、職場の様子が分かる情報があることです。今の採用の発信で足りない部分を補う手段として、TikTokを検討してみてください。
まとめ
主要ポイント
- 判断は目的で分かれる — 採用目的か顧客向けかで、TikTokの向き不向きが変わる
- TikTokは10代と20代で利用率が高い — 総務省の令和7年度調査で10代67.9%、20代61.5%
- 採用目的なら候補に入る — 新卒や若手の採用で、人柄や職場の様子を伝える
- 顧客向けは相手がいるかを確かめる — 40代と50代ではYouTubeとの差が大きい
- 1つ目の媒体は目的で選ぶ — 顧客向けはYouTubeショート、若手の採用はTikTokかリール
- 始める前に音源と同意を確認する — 企業の投稿は商用音楽ライブラリを使う
次のステップ
- TikTokで届けたい相手を、採用か顧客向けかに分けて書き出す
- 営業担当者や若手社員に、相手が普段見ているSNSを聞いてみる
- 試すなら、3か月の期間と見る指標を決めてから始める
SNS向けの動画の運用設計については、デジタルメディア戦略事業でもご相談を承っています。
関連記事
- BtoB企業のショート動画活用 — 再生される企画と冒頭の作り方
- BtoB企業のYouTube運用 — 撤退しないためのチャンネル設計
- SNS動画は内製か外注か — 工程ごとの分け方と体制の作り方
- 新卒採用向け動画の作り方 — Z世代に響く構成
参考ソース
- 令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書の公表(総務省、2026年6月26日) — 調査の背景と公表資料
- 令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 概要(総務省情報通信政策研究所) — 調査対象と期間、YouTube、Instagram、TikTokの全年代と年代別、男女別の利用率
- 商用音楽ライブラリについて(TikTok ビジネスヘルプセンター、2025年7月更新) — 一般の音楽ライブラリの商用利用の制限と、商用音楽ライブラリの曲数
- YouTube ショート動画に関連動画を追加する(YouTubeヘルプ) — ショートから自分の動画への誘導
- 明電ファシリティサービス 《採用》 企業紹介ショート動画(明電舎公式チャンネル(MEIDEN Channel)、YouTube) — 採用向けの短い企業紹介動画の例