海外の取引先や外資系企業の担当者とやり取りが増えてくると、「LinkedInの会社ページも動かしたほうがよいのでは」という話が社内で出てくることがあります。ところが、LinkedInの活用法を調べると、海外の数字や海外企業の事例が中心で、日本の会社にそのまま当てはまるのか判断しにくいものです。
LinkedInは、日本国内ではまだ利用者が多いSNSとは言えません。だからこそ、誰に向けて、誰の名前で出すかを先に決めておかないと、投稿しても反応がないまま止まってしまいます。
この記事は、海外取引や経営層向けの発信を担当するマーケティング・広報の方に向けて、日本での利用者の規模を確かめたうえで、会社ページと社員個人の投稿の役割分担、動画の作り方、仕様と社内ルールを整理したものです。動画マーケティング全体の進め方は、BtoBの動画マーケティングの進め方にまとめています。
この記事でわかること
- 日本でのLinkedInの規模 — 公式に確認できる数字と、そこから考える使いどころ
- 会社ページと社員個人の投稿の役割分担 — それぞれに向く動画
- 1回の撮影から両方の動画を作る設計 — 撮影前に決めること
- 動画の仕様と字幕 — LinkedIn公式ヘルプで確認した条件
- 社内ルールと成果の見方 — 続けるための体制
日本でのLinkedInの規模を確かめる
LinkedInの活用記事には、海外の調査から引いた数字がよく出てきます。ただ、出典がはっきりしないものや、海外の利用者を前提にしたものも少なくありません。ここでは、LinkedInが公式に出している数字だけを確認しておきます。
- 全世界 — LinkedInの会社概要のページでは、メンバーは14億人以上、登録されている会社は7,100万社とされています。アジア太平洋地域のメンバーは4億2,700万人以上です
- 日本 — LinkedInは2022年8月、日本での登録メンバー数が300万人を突破したと発表しました。この記事を書いた時点で、これより新しい日本の数字は公式な発表として確認できませんでした
全世界の規模に比べると、日本の登録者は一部にとどまります。国内の幅広い層に向けて再生数を集める場としては、YouTubeやほかのSNSのほうが向いているでしょう。
一方で、LinkedInはビジネスに特化したSNSで、見ている人は仕事の情報を探している人です。海外の取引先、外資系企業の担当者、転職を考えている専門職など、相手がLinkedInを使っていると分かっている場合には、ほかのSNSより届けやすい場面があります。
日本の会社がLinkedInを使う目的は3つに絞れる
利用者の規模を前提にすると、日本のBtoB企業がLinkedInで動画を出す目的は、次の3つに絞るのが現実的です。
- 海外の取引先・見込み客への発信 — 英語の字幕を付けた会社紹介や製品の説明
- 経営層・専門家としての信頼づくり — 代表や技術者が自分の考えを話す動画
- 採用 — 外国籍の人材や、専門職の中途採用に向けた職場の紹介
目的が決まると、誰の名前で投稿するかも決まってきます。
会社ページと社員個人の投稿の役割分担
LinkedInには、会社として持つ「会社ページ」と、社員一人ひとりの個人アカウントがあります。どちらでも動画は投稿できますが、見る人が受け取る印象と、届く範囲が違います。
| 投稿する場所 | 向いている動画 | 見る人の受け取り方 |
|---|---|---|
| 会社ページ | 会社紹介、製品の説明、導入事例、採用 | 会社としての公式な情報 |
| 代表・役員の個人 | 事業への考え、業界の見方 | その人の意見と人柄 |
| 社員の個人 | 仕事の工夫、専門分野の解説 | 現場の生の声 |

会社ページは「確かめに来る場所」
会社ページは、商談の前や、社名を見かけたあとに「どんな会社か」を確かめに来る人が見る場所です。ここに置く動画は、毎日の投稿で話題を作るものより、会社紹介や導入事例のように、いつ見られても内容が古くならないものが向いています。
フォロワーが少ないうちは、会社ページの投稿だけで多くの人に届くことは期待しにくいものです。会社ページは、あとから見に来た人が信頼できると感じる材料をそろえておく場所と考えておくと、投稿の頻度に悩まずに済みます。
個人の投稿は「人が人に届ける場所」
LinkedInでは、人とのつながりを通じて投稿が届きます。代表や営業担当、技術者がすでに取引先とつながっているなら、その人の投稿のほうが会社ページより先に相手の目に入ることが多いはずです。
個人の投稿では、会社の宣伝より、その人の視点が見られます。製品の機能を説明するより、「なぜこの仕事をしているか」「現場でよく受ける質問への答え」のように、本人にしか話せない内容を短く話す動画が合っています。
会社ページで出す動画
会社ページには、次のような動画を置いておくと、確かめに来た人が判断しやすくなります。
- 会社紹介 — 事業の内容と強みを1〜2分で。海外の相手を想定するなら英語の字幕を付けます
- 製品・サービスの説明 — 解決できる課題と使い方の要点
- 導入事例 — 顧客の言葉で語られる成果は、初めて会社を知った人にとって判断の材料になります
- 採用 — 職場の様子と社員の声
すでに作った動画がある場合は、新しく撮る前に、LinkedIn向けに字幕と冒頭を作り直して使えるか確かめてみてください。納品された動画の使い回し方は、インタビュー動画の納品後の二次活用で紹介しています。導入事例動画の作り方は、導入事例動画の作り方を5ステップで解説が参考になるはずです。
社員個人の投稿で出す動画
社員個人の投稿は、会社が「出してください」とお願いするだけでは続きません。本人が自分の名前で出してもよいと思える内容と、手間の少ない進め方を用意することが前提になります。
出てもらう人を選ぶ
最初から全社員に呼びかける必要はありません。次のような人から始めると、無理なく進みます。
- すでにLinkedInを使っていて、取引先や業界の人とつながっている
- 話す内容を自分で持っている(専門分野、担当している業界、よく受ける質問)
- 会社の名前で発信することに抵抗がない
代表や役員が先に始めると、社員も参加しやすくなるはずです。
会社が用意すること
本人の手間を減らすために、会社側で次のものを用意しておきます。
- 撮影と編集 — 本人はスマートフォンで話すだけ、または会社の撮影に合わせて一緒に撮る
- 字幕の作成 — 英語の字幕が必要な場合は、翻訳と字幕の付け方まで会社側で担う
- 投稿文の下書き — 本人が自分の言葉に直せるよう、要点だけを渡す
投稿するかどうかは、最終的に本人が決めるものです。強制にならないよう、参加は任意であることを最初に伝えておきましょう。
1回の撮影から会社ページ用と個人用を作る
会社ページ用と個人用の動画を別々に撮影すると、手間と費用がかかります。撮影前に使い道を決めておけば、1回の撮影から両方の素材をそろえることができます。

撮影前に決めておくこと
- 会社ページ用の動画 — 会社紹介や導入事例など、完成形の動画を1本決める
- 個人投稿用の質問 — 出演する人ごとに、本人の考えを聞く質問を2〜3個用意する
- 字幕の言語 — 日本語だけか、英語も付けるか
- 画面の向き — 横長で撮って縦に切り出すか、最初から縦も意識した構図にするか
インタビューで本人の考えを引き出す質問は、失敗しないインタビュー動画の質問項目10選が参考になります。
短い動画は「一つの話」で切る
個人の投稿用には、1つの質問への答えを1本にまとめる形が作りやすいでしょう。話の途中で切らず、問いと答えがそろった区切りで切り出すと、前後を知らない人にも伝わります。冒頭の数秒に結論を置く考え方は、BtoB企業のショート動画活用で詳しく扱いました。
画面の向きは、スマートフォンでフィードを見る人がいることを考えると、縦長か正方形に近い形も候補になります。縦横比の考え方は、動画の縦横比の選び方にまとめました。
LinkedInの動画の仕様と字幕
動画を書き出す前に、LinkedIn公式ヘルプに書かれている条件を確かめておきます。以下は、この記事を書いた時点でヘルプに記載されていた内容です。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| ファイルサイズ | 75KBから5GBまで |
| 長さ | 最長15分。最短はパソコンからが3秒、モバイルアプリからが2秒 |
| 解像度 | 256×144から4096×2304まで |
| 縦横比 | 1対2.4から2.4対1まで |
| フレームレート | 10fpsから60fpsまで |
| 主な形式 | MP4、MOV、WEBMなど |
ヘルプには、文字やロゴを動画の端に置かず、LinkedInの画面表示と重ならない範囲に収めるよう案内もあります。テロップを入れる位置は、上下左右に余白を残しておくと安心です。
字幕はSRTファイルで付けられる
LinkedInの公式ヘルプでは、パソコンから動画を投稿するときに、SRT形式の字幕ファイルを添付できると案内されています。個人アカウントの投稿と、会社ページの投稿のどちらでも使えます。
音を出さずにフィードを見ている人もいるため、日本語の動画にも字幕を付けておくのがおすすめです。海外の相手に向けた動画では、英語の字幕ファイルを用意しておくと、同じ映像を日本向けと海外向けに使い分けられます。
社員の投稿と会社ページをつなげる機能
会社ページと社員個人の投稿を連動させるには、LinkedInの機能を知っておくと便利です。公式ヘルプで確認できた内容は次のとおりです。
- 社員への通知 — 会社ページの管理者は、重要な投稿をしたときに社員へ通知できます。通知できるのは1日に1回までで、社員はこの通知をいつでも止められます
- 社員の投稿の再シェア — 管理者は、ダッシュボードのフィードから、会社がタグ付けされた投稿や社員の投稿を選んで会社ページで再シェアできます
- 廃止された機能 — 以前あった社員向けのタブと従業員アドボカシーのタブは、2024年11月から段階的に廃止されています。古い解説記事で紹介されている場合があるので注意してください
社員が投稿した動画を会社ページで再シェアすれば、会社ページを見に来た人にも、現場の声を見てもらえるはずです。逆に、会社ページで導入事例を公開したときは、社員に通知して、本人の言葉を添えて共有してもらう流れが作れます。
社内ルールと成果の見方
社員が自分の名前で投稿する以上、会社として最低限のルールを決めておく必要があります。
投稿前に確認すること
- 出してよい情報 — 顧客名、数字、未発表の情報の扱い
- 出演者の同意 — 社員や顧客が映る場合の了解の取り方と、退職後の扱い
- 確認の流れ — 誰が見てから投稿するか。個人の投稿まで細かく確認しすぎると続かないため、会社の名前や顧客に関わる部分に絞るのが現実的です
社員が出演する動画の権利の考え方は、社員が出演する動画の肖像権と著作権で詳しく扱っています。
成果は「誰に見られたか」で見る
LinkedInでは、再生数の大きさより、狙った相手に見られているかが大切です。次のような点を月に1回振り返ると、続けるかどうかを判断しやすくなります。
- 取引先や見込み客から、投稿をきっかけに連絡や反応があったか
- 商談の前に、相手が動画を見ていたか
- 採用の応募者が、動画を見て応募してきたか
数字だけでは見えにくい成果が多いため、営業や採用の担当者から話を聞く場を作っておくとよいでしょう。KPIの決め方は、動画マーケティングの効果測定を参考にしてください。社内でどこまで担当するかは、SNS動画は内製か外注かで整理しています。
よくある質問
Q1. 国内の顧客ばかりの会社でも、LinkedInに動画を出す意味はありますか?
顧客がLinkedInを使っていない場合は、優先度は高くありません。まずは主な顧客や採用したい人がLinkedInを使っているか、営業や人事の担当者に確かめてみてください。使っている相手がいるなら、会社ページに会社紹介の動画を1本置くところから始めるのが負担の少ない方法です。
Q2. 会社ページと個人のどちらから始めればよいですか?
すでに取引先とつながっている代表や社員がいるなら、個人の投稿から始めたほうが届きやすいでしょう。同時に、確かめに来た人のために、会社ページには会社紹介か導入事例の動画を置いておくと安心です。
Q3. 英語の字幕は必ず付けたほうがよいですか?
海外の相手に見てもらうことが目的なら、付けておくことをおすすめします。LinkedInではSRT形式の字幕ファイルを添付できるため、日本語版と英語版の字幕を用意しておけば、同じ映像を使い分けられます。
まとめ
主要ポイント
- 日本の登録者は300万人(2022年の公式発表) — 国内向けの再生数より、相手が使っていると分かる場面で使う
- 目的は3つに絞る — 海外への発信、経営層・専門家の信頼づくり、採用
- 会社ページは確かめに来る場所 — 会社紹介や導入事例など、古くならない動画を置く
- 個人の投稿は人が人に届ける場所 — 本人にしか話せない内容を短く
- 1回の撮影から両方を作る — 撮影前に、会社ページ用の動画と個人用の質問を決める
- 仕様と字幕は公式ヘルプで確かめる — 字幕はSRTファイルで付けられる
次のステップ
- 主な顧客や採用したい人がLinkedInを使っているか、営業と人事に確かめる
- 会社ページに置ける既存の動画がないか洗い出す
- 個人の投稿に協力してくれそうな人を2〜3人挙げ、話してもらう内容を相談する
LinkedInを含むSNS向けの動画の企画や撮影については、デジタルメディア戦略事業でもご相談を承っています。
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参考ソース
- About LinkedIn(LinkedIn Pressroom) — 全世界のメンバー数14億人以上、登録企業7,100万社、アジア太平洋地域のメンバー4億2,700万人以上
- ビジネス特化SNS「LinkedIn」、日本で300万人突破(Impress Watch、2022年8月22日) — LinkedInによる日本の登録メンバー数300万人突破の発表
- 動画の共有に関するトラブルシューティング(LinkedInヘルプ) — 動画のファイルサイズ、長さ、解像度、縦横比、フレームレート、セーフゾーン
- LinkedInでの動画にクローズドキャプションを追加する(LinkedInヘルプ) — SRTファイルによる字幕の追加
- LinkedIn会社・団体ページで「社員への通知」を使用する(LinkedInヘルプ) — 社員への通知の条件と回数の上限
- [[あなたの会社] タブと [従業員アドボカシー] タブは利用できなくなりました(LinkedInヘルプ)](https://www.linkedin.com/help/linkedin/answer/a6836874/?lang=ja) — 2024年11月からの段階的な廃止と、社員の投稿の再シェア