BtoB企業の動画活用について調べると、「効果があった企業は約5割」という記事もあれば「7割」という記事もあります。どちらかが間違っているわけではありません。誰に、いつ、どんな聞き方をしたかが違うため、数字が変わるのです。
社内で動画の予算を通すときや、企画書に市場の動きを書くときに、調査の数字を使いたい場面は多いはずです。ところが、見出しの数字だけを抜き出すと、元の調査が言っていないことまで言っているように読めてしまうことがあります。
この記事では、日本語で公開されているBtoB向けの動画活用の調査を中心に、実施主体、対象、人数、調査期間、設問の違いを並べて読み比べます。海外の統計を日本の記事から引き写したもの(孫引き)は使わず、数字はすべて元のページで確かめたものだけを載せました。最後に、社内資料に引用するときの書き方もまとめています。
この記事でわかること
- 調査の数字を読む前に確かめる5つの項目
- BtoB企業の動画活用を聞いた主な調査の違い — 実施主体、対象、人数、調査期間
- 「効果があった」の割合が調査ごとに違う理由
- 動画広告の市場規模に2つの推計がある理由
- 社内資料に数字を引用するときの書き方
調査の数字を読む前に確かめる5つの項目
調査の結果を使う前に、次の5つを元のページで確かめておくと、数字の意味を取り違えにくくなります。

- 実施主体 — 誰が行った調査か。動画制作会社や運用代行会社の調査は、自社の事業に関わるテーマを扱っていることが多いものです。数字が誤っているという意味ではなく、主体を書き添えて使うのが前提になります
- 対象 — 誰に聞いたか。「動画を活用している担当者」に聞いた調査と、「BtoB企業の担当者」全体に聞いた調査では、同じ設問でも結果が変わります
- 人数 — 回答した人数。設問によっては、前の設問で絞り込んだ一部の人だけが答えている場合があります
- 調査期間 — いつ聞いたか。公開日と調査期間がずれていることもあるため、両方を見ておきましょう
- 設問と選択肢 — どう聞いたか。「わからない」という選択肢があるか、複数回答か、上位3つまでの回答かで、割合の意味が変わります
この5つは、ほとんどの調査ページの「調査概要」の欄に書かれています。調査概要が見当たらない記事や、元の調査へのリンクがない記事の数字は、使わないほうが無難です。
BtoB企業の動画活用を聞いた主な調査
2026年11月時点で公開されている、BtoB企業の動画活用を扱った調査のうち、調査概要と元のページが確認できたものを並べました。いずれも、動画制作会社や動画・SNSの運用支援会社が実施したインターネット調査です。
| 調査名と実施主体 | 対象 | 人数 | 調査期間 |
|---|---|---|---|
| BtoB企業における動画マーケティングの実態調査 2026年版(アルファノート、ムビサク) | 動画マーケティングを実施しているBtoB企業の担当者 | 500名 | 2026年6月9日〜10日 |
| BtoB企業の営業・マーケティングにおける動画活用の実態調査(Lumii) | BtoB企業で動画を活用している営業・マーケティング担当者 | 402名 | 2025年1月16日〜22日 |
| BtoB企業の動画/SNS活用と問い合わせ・商談貢献に関する調査(ビーヘルシー) | BtoB商材を扱う企業でマーケティング、広報、営業などに関わる人 | 300名 | 2026年7月8日 |
| YouTube運用の撤退・失敗に関する実態調査(アカシア) | YouTubeを自社で運用中、または運用した経験がある企業の担当者 | 303名 | 2026年2月12日 |
対象の違いに注目する
表の対象欄を見ると、条件が少しずつ違うことがわかります。アルファノートとLumiiの調査は、すでに動画を使っている人に聞いています。ビーヘルシーの調査は、動画やSNSを運用していない企業の人も含めた300名が対象です。アカシアの調査はBtoB企業に限っておらず、YouTubeを運用したことがある企業の担当者に聞いています。
実施主体はすべて動画やSNSの支援会社
4つの調査は、いずれも動画制作やSNS運用の支援を事業にしている会社が実施しています。アルファノートは動画制作サービス「ムビサク」、Lumiiは動画制作、ビーヘルシーは企業のYouTube・SNS運用支援、アカシアはYouTube運用代行と動画制作を手がけています。引用するときは「〇〇社が実施した調査では」と主体を書き、業界全体の事実のようには書かないようにしましょう。
「効果があった」の割合は、調査ごとにどう違うか
動画活用の効果について、3つの調査が近い設問を置いています。ただし、聞き方と答えた人の範囲が違います。

- Lumii(2025年1月、402名) — 「動画の活用は営業・マーケティング活動においてどの程度効果がありましたか」に対し、「非常に効果があった」14.4%、「やや効果があった」36.6%で、合わせて51.0%。一方で「わからない」が37.3%ありました
- アルファノート(2026年6月、500名) — 「動画の活用はどの程度の効果がありましたか」に対し、「期待以上の効果があった」14.0%、「ある程度の効果があった」46.6%で、合わせて60.6%。「わからない」は14.0%です
- ビーヘルシー(2026年7月、198名) — 動画またはSNSを運用している198名に、問い合わせ・商談・営業活動などの成果につながっている実感を聞き、「明確に成果につながっている」33.3%と「ある程度成果につながっている」39.4%で、合わせて72.7%でした
数字の差は、そのまま時間の変化とは読めない
51.0%から60.6%、72.7%と並べると、効果を感じる企業が年々増えているように見えるかもしれません。ただ、3つの調査は対象も設問も選択肢も違います。特に「わからない」の割合はLumiiで37.3%、アルファノートで14.0%と大きく違い、この差が「効果があった」の割合にも影響していると考えられます。
ビーヘルシーの72.7%は、動画だけでなくSNSのみを運用している企業も含めた198名の回答です。「動画の効果」として引用すると、元の調査より範囲を狭く言い換えることになります。
同じ調査の中の数字を使う
時間の変化を言いたいときは、同じ主体が同じ設問で続けている調査を比べるのが基本です。今回の3つのように主体の違う調査を並べるときは、「調査によって51.0%から72.7%まで幅がある」のように、幅として示すほうが誤解を招きにくいでしょう。
活用している場面と、これから作る動画
活用している場面や今後作りたい動画も、選択肢の作り方で順位が変わります。
アルファノートの調査では、動画の活用シーン(複数選択)の上位は「YouTube・SNS」48.6%、「WEB広告」46.0%、「自社サイトへの掲載」31.4%でした。来期以降に制作を予定している動画も「YouTube・SNS向けの動画」40.8%が最も多く、「WEB広告用の動画」34.4%が続きます。
Lumiiの調査は、場所ではなく動画の種類を選択肢にしています。制作した経験がある動画は「商品・サービスの紹介動画」48.3%、「会社の紹介動画」30.8%、「営業プレゼン用の動画」26.6%の順でした。今後制作したい動画では「営業プレゼン用の動画」が32.3%で、「商品・サービスの紹介動画」45.5%に次ぐ2番目です。
2つの調査は、一方が「どこで使うか」、もう一方が「どんな動画か」を聞いています。「BtoB企業ではYouTube・SNS向けの動画が最も多い」と「商品紹介動画が最も多い」は矛盾しているわけではありません。引用するときは、選択肢が場所なのか種類なのかを書き添えておくと伝わりやすくなります。動画の種類ごとの使い分けは、BtoBで使う動画の種類と選び方で整理しています。
重視している指標と、1本あたりの予算
アルファノートの調査は、KPI(重要業績評価指標)と予算も聞いています。
最も重視しているKPI(最大3つまで回答)は、「再生回数・インプレッション数」41.6%、「サイト遷移数(クリック数)」36.0%、「コンバージョン数(資料請求・お問い合わせ)」32.2%の順でした。「商談数・案件化数」と「受注数・売上金額」はそれぞれ21.4%で、「特に設定していない」も18.2%あります。
動画制作の1本あたりの予算は、「10万円未満」28.4%、「30万円〜50万円未満」23.0%、「50万円〜100万円未満」18.8%、「10万円〜30万円未満」16.4%、「100万円〜300万円未満」8.0%、「300万円以上」5.4%でした。
予算の分布は、動画の種類や尺、撮影の有無によって大きく変わります。「BtoB企業の動画予算は10万円未満が多い」とだけ書くと、撮影を伴う動画の相場のように読まれるおそれがあります。最多の回答でも28.4%で、30万円以上と答えた人を足すと55.2%になる点も、あわせて示しておくとよいでしょう。予算の組み方は動画マーケティングの予算の決め方で、指標の決め方は動画マーケティングの効果測定で詳しく扱っています。
うまくいかなかった経験を聞いた調査
効果を聞く調査が多いなかで、アカシアの調査はYouTube運用の撤退や失敗を正面から聞いています。
YouTubeを運用した経験がある303名のうち、撤退・中止の経験がある人は62.7%(190名)でした。撤退の理由(190名、複数回答)は「営業成果に繋がらなかった」41.1%、「再生数が伸びず成果が見込めなかった」39.5%、「継続投稿が困難であった」37.9%の順です。失敗と判断するまでの期間は「3〜6か月未満」が39.2%で最も多く、1年未満までを合わせると73.5%でした。
ビーヘルシーの調査にも、成果につながっていない、または測定できていない54名に理由を聞いた設問があります。上位は「問い合わせ・資料請求への導線が弱い」20.4%、「継続的に運用するリソースが足りない」18.5%、「営業資料や商談で再利用できていない」16.7%でした。
この2つは、BtoB企業に限った調査かどうか、答えた人数がどれくらいかが違います。アカシアの調査はBtoB企業に限っておらず、ビーヘルシーの理由の設問は54名の回答です。社内資料では、「動画は続かない」という結論の根拠としてより、始める前に決めておくべき論点の例として使うほうが、元の調査の範囲に沿った使い方になります。YouTube運用の設計はBtoB企業のYouTube運用で解説しています。
市場規模の数字は、推計の方法で変わる
動画の重要性を説明するときに、動画広告の市場規模を引用することがあります。ここでも、同じ「2025年の動画広告」について2つの数字が公表されている点に注意が必要です。
| 推計 | 実施主体 | 2025年の数字 | 推計の方法 |
|---|---|---|---|
| 国内動画広告の市場調査 | サイバーエージェント(調査機関はデジタルインファクト) | 8,855億円 | 関係者へのヒアリング、保有データ、公開情報から広告主の支出額を推計 |
| 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析 | CARTA HOLDINGS、電通、電通デジタル、セプテーニ | ビデオ(動画)広告 1兆275億円 | 媒体社へのアンケートと追加ヒアリングから推定 |
2つの推計は、調査の方法と動画広告の範囲の決め方が違います。どちらが正しいかではなく、1つの資料の中ではどちらか一方に統一することが大切です。前年比を書くときも、同じ推計の中の数字を使いましょう(サイバーエージェントは前年比122.2%、詳細分析は前年比121.8%)。
同じ電通の「2025年 日本の広告費」では、インターネット広告費が4兆459億円で、総広告費8兆623億円に占める割合が50.2%と初めて半分を超えました。いずれも広告費の推計で、BtoB企業の動画活用の広がりを直接示す数字ではない点には注意が必要です。
見る側の数字 — 個人の利用と、購買担当者の行動
企業側の調査だけでなく、動画を見る側の調査もあります。
総務省情報通信政策研究所の「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(13〜79歳の1,800人、訪問留置調査、2025年12月1日〜7日)では、YouTubeの利用率が全年代で81.5%でした。公的機関が無作為に近い方法で抽出した調査なので、引用元としては扱いやすい部類です。ただし、聞いているのは個人のサービスの利用で、仕事で動画を見るかどうかではありません。
BtoBの購買の進み方を示す調査としては、ワンマーケティングの「BtoB購買プロセス白書2025」(経営者・役員、購買・契約担当者の600名、2025年9月30日〜10月1日)があります。営業担当者との初回面談の時点で「ほぼ決まっている」が29%、「いくつかの候補に絞り込まれている」が56%でした。動画についての調査ではありませんが、「営業に会う前に情報を集めている」前提を示す数字として、動画の企画書でよく組み合わせられます。購買の段階と動画の置き方はBtoBの動画マーケティングの進め方にまとめています。
社内資料に数字を引用するときの書き方
最後に、調査の数字を社内資料や企画書に書くときの型をまとめます。
1文に入れる4つの要素
数字を書くときは、実施主体、調査期間、対象と人数、設問の言葉を1文に入れます。
アルファノートが2026年6月に実施したインターネット調査(動画マーケティングを実施しているBtoB企業の担当者500名)では、動画の活用で「期待以上の効果があった」「ある程度の効果があった」と答えた人が合わせて60.6%だった。
脚注や資料の最後に、調査名と元のページのURLも書いておきます。アルファノートとLumiiは、引用するときに元のページへのリンクを置くよう求めているので、その条件にも従いましょう。
避けたい書き方
- 主体を省く — 「BtoB企業の6割が効果を実感」とだけ書くと、業界全体の事実のように読まれます
- 答えた人の範囲を広げる — 一部の人だけが答えた設問を、全員の割合として書く。たとえばLumiiが2022年4月に経営者1,037名に行った調査では、「動画が売り上げに貢献している/していたと思うか」の設問は148名の回答です
- 複数回答の割合を足す — 複数選択の設問では、割合を合計しても意味のある数字になりません
- 古い調査を新しい数字のように使う — 公開日や更新日ではなく、調査期間を書きます
- 孫引きを使う — 他社の記事に載っている数字は、元の調査を開いて確かめられたものだけを使います。元のページが見つからない数字は、使わないほうが安全です
調査は、あくまで他社の状況を知るための材料です。自社の判断には、自社の数字(問い合わせ数、商談数、受注までの期間など)と組み合わせて使うことをおすすめします。
よくある質問
Q1. 動画制作会社の自社調査を引用しても問題ありませんか?
調査概要(対象、人数、調査期間、調査方法)が公開され、元のページへのリンクを置けるものであれば、引用元として使えます。そのうえで「〇〇社が実施した調査では」と主体を書き、業界全体の事実として言い切らないようにしましょう。
Q2. 海外の調査の数字を使いたいときはどうすればよいですか?
日本の記事に載っている海外の数字は、元の調査ページを開いて、調査時期、対象の国、人数を確かめてから使います。確かめられない場合は使わないのが安全です。日本の企業の状況を説明したいときは、国内の調査を優先したほうが、読み手にも伝わりやすいはずです。
Q3. 調査ごとに数字が違うときは、どれを使えばよいですか?
伝えたいことに最も近い対象と設問の調査を1つ選び、主体と対象を書き添えて使います。複数の調査を並べる場合は、平均を取ったり時間の変化として読んだりせず、「調査によって幅がある」と示すのが無難です。
まとめ
主要ポイント
- 数字は5つの項目と一緒に読む — 実施主体、対象、人数、調査期間、設問と選択肢
- BtoBの動画活用の調査は、動画やSNSの支援会社によるものが中心 — 引用するときは主体を書く
- 「効果があった」は51.0%から72.7%まで幅がある — 対象、設問、「わからない」の割合が違う
- 市場規模は推計の方法で変わる — 動画広告は8,855億円と1兆275億円の2つの推計があり、資料の中ではどちらかに統一する
- 引用の型を決めておく — 主体、調査期間、対象と人数、設問の言葉を1文に入れ、元のページのURLを添える
次のステップ
- 社内資料で使っている調査の数字について、元のページと調査概要を確かめる
- 引用する文に、主体、調査期間、対象と人数が入っているかを見直す
- 調査の数字と並べる自社の数字(問い合わせ数、商談数など)を用意する
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- 動画マーケティングの予算の決め方 — 年間で配分する考え方
- BtoB企業のYouTube運用 — 撤退しないためのチャンネル設計
参考ソース
- BtoB企業における動画マーケティングの実態調査 2026年版(アルファノート、ムビサク、2026年6月29日公開) — 調査概要、活用シーン、重視しているKPI、1本あたりの予算、効果の程度、来期以降の制作予定
- BtoB企業の営業・マーケティングにおける動画活用の実態調査(株式会社Lumii) — 調査概要、制作した経験がある動画、効果の程度、今後制作したい動画
- BtoB企業の営業・マーケティングにおける動画活用の実態調査 プレスリリース(株式会社Lumii、2025年2月4日) — 調査期間、対象、有効回答数
- 経営者の動画活用における実態調査(株式会社Lumii) — 2022年4月の調査、設問ごとの回答者数
- BtoB企業の動画/SNS活用と問い合わせ・商談貢献に関する調査(株式会社ビーヘルシー、2026年7月22日) — 運用している割合、成果の実感、成果につながらない理由
- 企業のYouTube運用、62.7%が撤退・中止を経験(株式会社アカシア) — 調査概要、撤退・中止の経験と理由、失敗と判断するまでの期間
- 2025年国内動画広告の市場調査(サイバーエージェント、2026年3月9日) — 動画広告市場の規模、前年比、推計の方法
- 2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析(CARTA HOLDINGS・電通・電通デジタル・セプテーニ、2026年3月5日) — ビデオ(動画)広告費、前年比、調査方法
- 2025年 日本の広告費(電通、2026年3月5日) — インターネット広告費と総広告費に占める割合
- 令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書の公表(総務省、2026年6月26日) — YouTubeの利用率、調査対象、調査方法、調査期間
- BtoB購買プロセス白書2025(ワンマーケティング、2025年11月11日) — 初回面談時点での購買先候補の絞り込み、調査概要